公立施設への期待〜ティアラこうとう・ジュニアバレエ団&Noism

このところ興味深い公演を続けて観た。Noism07『PLAY 2 PLAY-干渉する次元』(5月8日・Theatre 1010)とティアラこうとう・ジュニアバレエ団『ヘンゼルとグレーテル』(5月3日・ティアラこうとう)。ともに公立施設の主催・運営によるものである。

Noismに関しては“日本初のレジデンシャル・ダンス・カンパニー”という形容詞はもはやクリシェとなった感もある。新潟市の援助により劇場・稽古場が提供され、芸術監督・金森穣やダンサーたちにはギャラや振付料が支払われる。日本において、本格的な劇場専属のダンスカンパニーは前例がない。ダンスファンならば否応なく応援したいものである。全国各地での公演に加え、今年新春には、南米ツアーを敢行。地域に根ざし、ワールドワイドな活動も視野に入れ注目される。新作『PLAY2PLAY-干渉する次元』は、舞台美術:田根剛、音楽:トン・タッ・アン、衣装:三原康裕とのコラボレーションが注目された。金森の前作『NINA〜物質化する生け贄』を経てカンパニーの研鑽の真価を問う力作でもある。創作にたっぷり時間をかけられるという利点を活かし、細部まで疎かにしない緻密な舞台づくりの程が窺われた。ダンサーたちの力量も劇的に高まっており(ことに井関佐和子の表現力は圧倒的)。Noism3年の集大成という触れ込みにも納得できるものがあった。

一方、ティアラこうとう・ジュニアバレエ団『ヘンゼルとグレーテル』は、江東区地域振興会主催。ジュニアバレエ団は、ティアラこうとうの劇場下部組織である。昨年に続く2度目の発表会。ティアラは東京シティ・バレエ団/東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団と1994年から芸術提携を結んでいるが、ジュニアバレエ団は直属の組織として注目される。『ヘンゼルとグレーテル』は、グリム童話に基づく2幕構成、ジュニアらしい清新な演技が活かされた好プログラム。客席には老若男女多くの観客が詰めかけた。アットホームで地域性の高い公演、舞台成果、運営面においても高く評価される。監修・演出・振付の石井清子によると、ジュニアバレエ団とこの春第1回発表会の開かれたというティアラこうとうジュニア・オーケストラ、さらには長年活動をつつける江東少年少女合唱団が一丸となった公演を目標としているという。地域に密着し根深く太く公演・普及活動を続けることは重要である。

現在、国内(ことに首都圏)では多くの団体が鎬を削っている。地に足の着いた活動を展開、一般の市民にアピールできるソフトを自力で築いていくことこそ今後“勝ち組”になる道のひとつだと思う。ハードとしてのバックアップ、ソフトの充実、地域住民へのアピールいずれも大切であり、公立施設に寄せられる期待は、大きい。