H・アール・カオス、カレイドスコープ、平山素子、寺田みさこ


毎年、夏前から公演ラッシュが始まり、翌年の三月末まで続く。今年も5月末あたりからいろいろと興味深い公演が並んだ。

H・アール・カオスDrop Dead Chaos』(5/24-27日 世田谷パブリックシアター)は久々の新作公演。これまでのカオス作品とは趣を大きく異にしストイックな美しさが出ていた。美術も派手さは抑えられシンプル。白河直子のみならず他のメンバーの存在感も増している。新上裕也と群青もカオスの世界になじんでいた。

ダンスカンパニーカレイドスコープ「The World of Kaleidoscope vol.2 part1 〜7人のコレオグラファーによる〜Members Dance Show Case」(5/25-27日 麻布die pratze)はメンバーたちによる7つの小品が並ぶ。中核の二見一幸、田保知里のほか大竹千春、中村真知子の創作などに手ごたえを感じた。優れた踊り手の揃うカンパニーだが、このところ二見以外にも創作の機会を与えつねに活性化を図っている姿勢は好ましいと思う。

平山素子「Life Casting -型取られる生命-」(6/1-3日 新国立劇場小劇場)は“型取り”をテーマに二つの作品が上演された。前半の平山によるソロには光樹脂によって創られた自身の型が登場、それと向き合いながら踊る。濃密で息をのむような30分。後半のグループワークでは、平山は振付に徹した。緩やかながら不定形で踊るのは難しい振付だろう。酒井はな、平原慎太郎、川口ゆいら個性派キャストを用い混沌とした世界を表現していた。

SePT独舞 vol.17・寺田みさこ『愛音-AION-』(6/1-3日 シアタートラム)は、寺田初のソロ公演。美術の高嶺格との共同作業にも注目が集まった。エロくグロテスク。場を追うごとに変質し過剰なまでに暴走する身体。砂連尾理とのデュオでは、男女の距離をさまざまなアプローチで探求してきたが、今回は寺田の身体に蓄積されたカオスとでもいうべきものが出ていたように思う。高嶺の美術は意想外のアイデアであり、寺田のダンスと密接に関わりあう。動きという点では、バレエテクニックと、これまで砂連尾との共同作業などを通じ育まれた動きと共存、衝突、絡み合う点が興味深い。バレエだからコンテだからというのではなく動きのどこを切り取っても自身の蓄積のなかから生まれてきたのは疑いないだろう。ちなみにこの公演は、7月28-29日にびわ湖ホール 大ホール舞台上舞台でも上演される。