2007佐多達枝バレエ公演

佐多達枝バレエ公演が今年も行われた。近年『beach』『庭園』など重量級の大作が続いたが、今回は再演ものを中心とした短・中篇による構成。初見者にとっても佐多振付の妙味を味わえるプログラムとなったように思う。
なかでも島田衣子、武石光嗣、石井竜一の踊った『ソネット』('95年初演)は10分強と短い作品だが傑作中の傑作。若者3人に交錯するさまざまの感情の移り変りが高密度かつスピードのあるムーヴメントによって連ねられる。女ひとり男ふたりの三角関係だが、ありきたりなものではない。衝突や裏切り、友情、愛情……人間感情の機微を巨匠は透徹して見据え、描く。その独自の美学、詩情に胸を揺さぶられざるを得ない。
高部尚子に振付けられた新作ソロ『わたしが一番きれいだったとき』、女性11名(ひとり怪我のため10人で踊った)による群舞作品『a fig leaf』('99年初演)はスタイル内容ともに興味深く、佐多作品を単にバレエ的枠組みのみでは語れないということを実感させられた。男性9名による『パラダイス』('96年初演)も男たちの“自由奔放”を5景にわたり描き出し見ごたえがある。
佐多作品はその独自性、水準の高さに関わらず日本の舞踊界において年功序列的評価は別にしてその真価を十分に認められていないのが実際のところ。海外の著名振付家の来演ばかり話題を集めるが、日本にも世界的水準で誇りうる大家がいることはもっと知られていい。来年夏には、昨年発表され反響をよんだ『庭園』が再演される。より多くの人に佐多作品のよさにふれてもらいたいと心から願う。
(2007年7月5、6日 シアター1010)