松岡伶子バレエ団 アトリエ公演

17年前に始まったこの公演は、当初新人公演と謳われていたように、若いダンサーのための勉強の場として始められた。初期はクラシック作品中心だったが現在では第一線で活躍する振付家を招き、現代作品にも取組み成果を挙げている。
今年のゲスト振付家は島崎徹。国内よりも海外でその真価を認められている、世界的振付家だ。現在は、神戸女学院にて舞踊専攻の教授を務め、今春の発表会は大反響を巻起こしたと聞く。筆者がその作品に接するのは02年新国立劇場「J-バレエ」(素晴しい企画だった)で発表された『FEELING IS EVERYWHERE』以来。
今回上演された『RUN』も魅力的な作品であった。島崎ならではの高密度な振りは勿論のこと、フロアの動きからただ走るという行為まで多彩な舞踊語彙が織り込まれ、観るものを飽きさせない。ハードな舞台、踊り手は皆、身体の芯からふり絞るように動きを生みだし圧倒的であった。踊り手個々の個性、エネルギーがひしひしと感じられるのが素晴しい。大岩千恵子、安藤有紀はじめ松岡バレエ団の踊り手に加え、客演の佐々木信彦、山田茂樹の熱演も心に残った。
島崎の作品を観るたび、真のオリジナリティとは何か、と考えさせられる。島崎は、西洋流の振付術を身に着けながらもその枠に囚われることはない。世界規模で考えても、気鋭の振付家といえば、フォーサイスもしくはキリアンの亜流ばかりが跋扈している。欧米のカンパニーもそれらと一線を画した振付家を探しているのが現状のようだ。創意に富む島崎作品が欧州で引く手あまたなのも当然である。その島崎の帰国後、最初に作品制作を依頼したのが松岡伶子だ。松岡バレエでは、古くから創作バレエにも力を入れてきた。古典と創作は両輪という思想を長年、地域から発信してきた姿勢は注目される。
『パキータ』よりマズルカ、『アサフィエフ組曲』(振付:松岡璃映)はジュニアの踊り手の清新さをうまく引き出す好プログラム。『白鳥の湖』第3幕より 黒鳥のグラン・パ・ド・ドゥは小島沙耶香と市橋万樹が好演。それぞれ若さ溢れる踊りであり、ことにヴァリエーションでは見せ場を作った。『卒業記念舞踏会』(振付:大寺資二)には、このバレエ団の自慢、ボーイズクラスの充実振りを実感させられる。通常のフェッテ競争などを排し、男性陣の活躍の場が増えているのが特徴。若い踊り手皆に活躍の場を与え、心温まる作品としてうまくまとめていた。
(2007年7月16日 愛知県勤労会館)