映画『追悼のざわめき』

伝説のカルトムービーが還ってきた!!
1988年5月公開の松井良彦監督作品『追悼のざわめき』は賛否両論を巻起こした。舞台は大阪のドヤ街。若い女性の惨殺事件が続発する。 被害者たちは下腹部を切り裂かれ、生殖器が持ち去られていた。 犯人は青年・誠。 惨殺した女性から奪った生殖器をマネキンのなかに埋める。小人症の兄妹、兄にレイプされ殺される少女、その妹の腐った死体を貪る兄といった人物たちが登場。全編、暴力と差別が入り乱れる。
モノクロ画面に映し出される生々しいまでの暴力と残酷。野卑極まりない、人間の暗部。やがて傷痍軍人など終戦後を想起させる人物たちも現れ、シュールで退廃した世界へと転じていく。猟奇的殺人や近親相姦といった主題は今や映画や漫画でも珍しくはない。が、公開時は相当ショッキングなものだったようだ。実際、好悪は大きく分かれると思う。キワモノ呼ばわりする人もいるかもしれない。公開時、映画評論家の杉浦孝昭(おすぎ)は“とにかく汚らしい”と悪罵した。しかし、フィルムの底流には社会の底辺で苦しむ人間の孤独や絶望を透徹して見据える創り手の視線が感じられる。
脚本を読んだ寺山修司は“(映画化が)実現したら事件”と語ったという。制作可能になった背景には、石井聰亙らを嚆矢とした80年代のインディーズ映画ブームがあるのは確かである。そして、関西のアングラカルチャーの協力も大きいだろう。異能の舞踏集団として名を馳せた白虎社の面々は代表の大須賀勇はじめ出演を果たしている。劇団維新派の役者が出演(代表の松本雄吉は声の出演)しているのも見逃せない。関西人ならではの強烈なバイタリティ抜きには生み得なかったことは間違いないだろう。

※東京 シアターイメージフォーラムにてレイトショー公開中。
※大阪 シネヌーヴォX 9/22-10/12公開
※京都 京都みなみ会館 今秋公開 
※名古屋 名古屋シネマテーク 今秋公開

追悼のざわめき』HP:http://www.tsuitounozawameki.net/
「松井良彦、映画自記」:http://www.aa.alpha-net.ne.jp/cineymbw/