Noism07「W-view」

Noism4年目のシーズン開幕は、外部振付家招聘企画の第3弾。元ネザーランド・ダンス・シアターの中村恩恵、現フォーサイス・カンパニーの安藤洋子を招いての公演である。プログラムに載せられた芸術監督・金森穣の言葉によると、公演名にはいくつもの意味がこめられているようだ。二つの中篇作品よるダブル・ビルということ、それぞれキリアン、フォーサイスという20世紀後半を代表する2大巨匠振付家の愛弟子たちの世界を現す創作であること、そして両者が女性振付家であるということ、の三点。
最初に上演された安藤作品『Nin-Siki』は「存在と認識」をテーマしたというもの。9人のダンサーたちが多彩な映像や照明効果にあわせ、組んず解れつの動きを展開する。ダンサーの身体そのものに焦点をあわせる姿勢は金森の近作とも相通じ、興味深い。踊り手の修練度の高さは感じられるが、ややあっけなく終わってしまった感も…。中村の『Waltz』は、宮河愛一郎のソロを皮切りに、金森や井関佐和子らが絡む展開。この作品では、台詞が印象的に用いられる。ブレイクの詩に触発され、アルファベットの文字ひとつ一つに動きを宛がったり、詩の微妙な意味合いに応じて動きを生んだりといった試みがなされているようだ。決して新奇な試みではないものの音楽、空間構成含め緻密な創りではあり、それなりに完成度は高い。ここでは、ダンサー金森の圧倒的存在感に惹きつけられた。金森は近年の自作では原則、自身が出演しない。その登場は外部振付家招聘企画のみどころのひとつといえる。
今回から新メンバーが加入したが略歴はじつに多彩。堤悠輔は、貞松・浜田バレエ学園を経て欧州で活動、キリアン、エック、ドゥアトらの作品を踊っている。原田みのるは、ジャズダンス出身。藤井泉は、ブロードウェイミュージカルへの出演含め多岐に渡るジャンルの舞台を経験。青木枝美は、児童舞踊を振り出しにバレエを学び、近年はコンテンポラリーの舞台にも出ている。新たに加わった多様な感性たちが金森のミューズたる井関、ベテラン青木尚哉らNoismの歴史を創り上げてきた踊り手たちと化学反応を起し、今後一層刺激的な舞台を繰り広げてくれるであろうことは想像に難くない。Noismは、来年2月に米・ワシントンでの『NINA〜物質化する生け贄』招聘公演を経て、初夏には国内で金森の演出・振付による新作を発表する。その舞台を心待ちにしたい。
(2007年10月12日 Bunkamuraシアターコクーン)