Roussewaltz『Bon appetit! -deluxe-』

内田香率いるRoussewaltzは、自主公演のほか合同公演や新国立劇場コンテンポラリーダンス等への出展を通し活躍している。この度、六本木のディープスポットであるクラブSuperDeluxeにおいて女性メンバーによるショーケースを行った。
三方を客席に囲まれたスペースに赤のテーブルクロスのかかった机と椅子が置かれている。そこに四人のダンサーたちが笑い声とともに駆け込み『Bon appetit!』は始まる。テーブルクロスや椅子も用いて女の子たちがゲームを楽しむかのように戯れる。しかし、ダンサーたちの動きの質感はエッジーで硬質。ハードでカッコいいダンスに痺れさせられる。特別新奇なことをしているわけではないが、彼女たちの踊る姿はシャープだけれども肩肘張ったところはない。そこにコンテンポラリーな感覚を感じさせられる。
メンバーたちの作品も上演された。所夏海のソロ『Black Dahlia』は、雰囲気のある女性ヴォーカル曲にのせた逸品。優雅さと艶やかさが繊細かつ力強いダンスのなかで絶妙に溶け合っている。原裕子のソロ『PRISM』は黒のジャケットを着て、男っぽく踊られる。洗練された、嫌味のない両性具有のエロスが魅力だ。クリオ尚子と寺坂薫『Desert』はベリーダンスとモダンの踊り手の共演。両者のエネルギッシュな踊りのぶつかりあいに会場のボルテージは否応なく上昇した。
が、何よりも圧倒的だったのが内田の『dear…』。シャンソンにのせ、鋭くも微細な身体コントロールをみせる。ダイナミックな動きを得意とし、かつ体の利く踊り手であるが、より動きの精度が高まり踊りに進境の程がうかがわれた。
モダン、コンテンポラリー、バレエと、ジャーナリズムではジャンル間に壁を作る傾向にあろう。だが、風潮、流行に安易に流されない創り手たちはそんな境界を越え意欲的に活動している。モダンやコンテの枠に囚われず、時代の感性をおのずと作品に反映させるRoussewaltzは東京のダンスシーンにおいて独特の地位を獲得している。
(2007年11月23日 SuperDeluxe)