野外公演の魅力

この秋、日本初の本格野外オペラ公演が山梨県・河口湖で行われるようだ。プラハ室内歌劇場の来日公演の一環として上演されるモーツァルトの『魔笛』である。欧州では野外オペラは珍しくない。イタリア・ヴェローナの野外オペラは古代ローマに創られたコロセウムを会場に行われ、当地の夏の風物詩として名高い。オーストリアでも湖上オペラが行われているようだ。オペラを生で聴く機会は残念ながら少ないのだけれどもロケーションの魅力にそそられる。機会があれば足を運んでみたいもの。
バレエでは国内において既に本格的な野外上演が行われている。今夏19回目を迎える清里フィールドバレエはあまりにも有名(出演:バレエ シャンブルウエストほか)。自然に恵まれたリゾート地で2週間にわたって行われ、昨年は初日公演の模様が日刊紙の一面でも取上げられるなど夏の風物詩としてよく知られている。星空の下での幻想的なステージを1度体感すると病みつきになってしまう。他に、昨年初の試みとして多摩の人造湖、相模湖畔で第1回さがみ湖野外バレエフェスティバルが行われた。酒井はな&李波主演の『白鳥の湖』全幕を2日間上演し好評。今年は残念ながら行われないようだが来年以降の展開に大いに注目したい。
ところで、野外バレエといえばいくつかDVDにもなっている。「ローラン・プティ・ガラ/若者と死」(発売:フェアリー)は、1997年にプティのマルセイユ・バレエ芸術監督就任25周年を記念して行われたものを収録。マルセイユの港に面した野外舞台でジジ・ジャンメールやアルティナイ・アスィルムラートワ、ルシア・ラカッラ、ルイジ・ボニーノといったプティ・ダンサーたちが繰り広げるまさに夢の饗宴だ。[rakuten:forestplus:10029636:detail]「マ・パヴァロワ」「タイスの瞑想曲」『カルメン』など名作の抜粋が踊られる。ルドルフ・ヌレエフとジャンメールによるスタジオ撮りの『カルメン』も併録され、プティ芸術の粋が凝縮されているといっていい極め付きの1枚だ。野外といえば、「ベジャール&キーロフ・バレエ ホワイトナイツ・ガラ」(発売:フェアリー)も忘れられない。二十世紀バレエ団とキーロフ・バレエがサンクトペテルブルクの白夜の下競演。『ギリシャの踊り』『ロミオとジュリエット』『アレポ』などベジャールの代表作が踊られる。ダンサーも、ジョルジュ・ドン、 ミシェル・ガスカール、エカテリーナ・マクシーモワ、ウラジーミル・ワシーリエフ、アルティナイ・アスィルムラートワ、ファルフ・ルジマートフ、リン・チャールズ、エリック・ヴ=アン、オリガ・チェンチコワ、ガリーナ・メゼンツェワとベジャール・ダンサー+ロシア・バレエの大スターたちが登場して応えられない逸品。こちらもファン垂涎の1枚だ。いずれも野外公演ならではの趣のある雰囲気が映像を通してもよく伝わってくる。
ロケーションの魅力によって多くの人たちが集い、パフォーミングアーツに親しめる野外公演。演劇でも大阪の劇団・維新派は大阪南港や瀬戸内海の犬島の銅精錬所跡等で公演を行い、全国から多くの観客を集めている。準備に時間がかかり、天候にも左右されるなど開催は容易ではないがさまざまの場所で野外公演を見たいものだ。