MOKK LABO#3『暗闇』

MOKKは村本すみれ主宰による「劇場機構に留まらない空間からの発信」を軸にしたダンスプロジェクト。これまでも神社の境内や廃墟ビルなど「場」にこだわり踊ってきた。LABOシリーズは、“日常ににある生活小空間をセレクト、発信する企画”。今回の舞台は、板橋区蓮根の住宅街の駐車場に設置されたコンテナボックスだった。
定刻になると、観客(といっても5名様限定)は靴を脱いでコンテナボックスに導き入れられる。なかは闇、ひたすら闇。観客皆で手をつないでください、という声が聞こえる。筆者は観客5人の一番端だったのだが、空いているほうの手を何者かに握られヒヤッとする。壁沿いに沿って歩いてくださいという声に従い、皆手探りで動く。なかのほうへ導き入れられると、パフォーマンスが始まる。暗く、シーンと静まり返ったコンテナ内に、コツコツと小さな音が響く。観客は、否が応にも感覚を研ぎ澄まさなければいけない。普通どんなに暗くても、目が慣れてくれば、おぼろげでも眼前の光景が見えるもの。しかし、完全に光を遮断した密室なので、いくら目を凝らしても何も見えない。ときおりほのかに明滅する光。ダンサーたちの動く気配。やがて手をつないでいた観客たちは、はぐれ、ダンサーたちに手をとられてしまう。方向感覚もないまま振り回され、なんとか壁伝いにフラフラ。最後、コンテナの扉が開けられ「お疲れ様でした」と声をかけられると、なんと不思議にも最初に入ったコンテナの入り口に戻されている・・・。
15分ばかりのパフォーマンスながら刺激的だった。我々が日ごろ使わないような鋭敏な感覚を人工的な密室のなかで取り戻させる。パフォーマーたちも暗闇のなか五感を研ぎ澄まさなければ動けなかっただろう。3日間11ステージ行われたが、各回それぞれ違ったパフォーマンスになったはず。観客参加型をうたったダンス公演は散見されるけれども、これはそうたわなくても観客の参加なしには成立しないものだ。すべてが闇のなかで行われたため、写真や映像による記録はほとんど不可能。関係者は残念だろうけれども、記録には残らなくても記憶には深く残るパフォーマンスだった。

Direction&Choreography 村本すみれ
Dancer:江角由加 寺杣彩 登渡カッパ 村本すみれ
Staff:大畑豪次郎 影山雄一 加藤小百合 上栗陽子
Produced by MOKK

(2008年6月20日 東京都板橋区蓮根にあるコンテナボックス)

■参考記事■

MOKK project02『ましろ』@神楽坂・赤城神社の感想
http://d.hatena.ne.jp/dance300/20080412

MOKK LABO#2『廃墟』@九段下・九段下テラスの感想
http://d.hatena.ne.jp/dance300/20071217