コンクール雑感

夏は公演、発表会とともにバレエのコンクールが全国で盛況を誇っている。東京や名古屋では連日なにかしら行われているといっていいくらい集中する時期も。先日行われれたさるコンクールのジュニア部門に中国勢が大挙して参加、賞を軒並みかっさらっていったように国際的な広がりもみせつつあるようだ。ちなみに現在、国内には30は下らない数のコンクールがあるとか。世界で一番コンクール熱心な国であるのは確実。
コンクールの功罪はいろいろいわれるけれども、出場者にとっては、自分の力量を確認し、同世代の踊り手の演技をみて刺激を受ける機会として貴重なのであろう。観客や関係者にとっては、各地の若い踊り手を見ることができ便利ではある。コンクールから巣立ってスターになった踊り手は枚挙にいとまがない。しかし当然ながら、ヴァリーションひとつの演技で、踊り手のすべてが分かるわけでも人生が決るわけでもない。伸び盛りの若手を公演、舞台で観る機会が増えていくのが望ましいだろう。若い踊り手にプロによる生のオーケストラ演奏付で本格的な舞台を踏ませるという公演も行われている。そういった機会がもっと増えていくのが好ましい。
近ごろ、コンクールや公演、発表会で若い踊り手を観ていると、テクニック一辺倒ではなく雰囲気、佇まいがなんともいい子や演技力のある子が出てきていていると感じる。5年後、10年後のシーンが楽しみになってくるが、若い芽を潰さず伸ばしていく土壌を育てることが大切だろう。結局のところ、バレエとは、振付やプロダクションも重要だけれども、ダンサーの魅力に負うもの。そもそもダンサーがいなければ舞台は成立しないのだから。若く才能あるダンサーを消費することなく育てる環境づくりを期待したい。