牧阿佐美バレヱ団、イデビアン・クルー、東京バレエ団、小林紀子バレエ・シアター、高襟

日生劇場ファミリーフェスティバルに登場した牧阿佐美バレヱ団『ロメオとジュリエット』は寝室の場を省略する(※当初誤ってバルコニーの場と書いてしまいました訂正します)などのスペシャルカットバージョン。総監督・三谷恭三の解説付きでファミリー層に訴求する。伊藤友季子&逸見智彦主演日をみることができたがジュリエット役・伊藤友季子の稀有な音楽性の片鱗は堪能できた。
東京バレエ団ドン・キホーテ』はポリーナ・セミオノワ&アンドレイ・ウヴァーロフと上野水香組の競演が話題だった。セミオノワは初役のためか序盤硬さがみられ期待したような爆発的な演技は観られなかったもののアダージョの情感をしっかりだせるのはさすが。モスクワ舞踊学校の大先輩・ウヴァーロフとの相性もなかなかだった。上野と高岸は演技面でツボを得た舞台さばきをみせ充実していた。
小林紀子バレエ・シアター『ラ・シルフィード』はデンマーク出身、ヨハン・コボーの演出。ブルノンヴィル振付を知りつくしたコボーの精緻きわまる演出は見事。コヴェントガーデン、ボリショイに続いての紹介は有難く質的に極めて高い仕上がり。「マクミラン・ダイヴァーツ」では気鋭・小野絢子が中村誠と組んで『ロメオとジュリエット』バルコニーのパ・ド・ドゥを演じて可憐かつ伸びやかな踊りで魅了させてくれた。『エリート・シンコペーションズ』よりを冨川直樹と踊った萱島みゆきもノーマークだったが実にいい踊り手だ。
デビアン『排気口』はフォーサイス・カンパニーの安藤洋子を迎え、井手茂太自身も踊ったが昨年の『政治的』一昨年の『補欠』よりはインパクトは薄いか。深見章代率いる高襟の初自主公演は深見のやりたいことをブチこんだものだった。猥雑で騒がしくエネルギッシュ。ただ何を伝えたいのかが見え難い面もあってワルノリ気味にも映った。