2008年7月〜9月の印象に残る公演ベスト5

備忘録を兼ねてのシリーズ第3回目。国内公演限定。

Noism08『Nameless Hands〜人形の家〜』
 7月2日シアタートラム
2008佐多達枝バレエ公演『庭園 the summer garden』
 7月4日シアター1010
松岡伶子バレエ団アトリエ公演「深川秀夫 バレエの世界」
 7月20日愛知県勤労会館
第19回清里フィールドバレエ『タチヤーナ』
 7月28日清里高原 萌木の村 野外特設劇場
ルグリ-マラーホフ東京バレエ団『ジゼル』全幕
 9月11、12、13昼夜、16日ゆうぽうとホール

Noism08の金森穣新作は実験的かつ手ごたえがあった。代表作『NINA』で試みた人間と物質という主題を推し進め、人形や黒子も用いて演劇性と身体性が高いレベルで融合するものとなった。2008年を代表する作品のひとつに数えられることになるだろう。50年にわたって絶えず先鋭的な創作活動を続けてきた佐多達枝の個人リサイタルが今回で一区切りつくという。ベテランならではの深いテーマ性とみずみずしい感性に衰えはみられないだけになんとか次回を期待したい。松岡伶子バレエ団アトリエ公演は深川秀夫作品を5つ並べた深川作品集。ドラマティックバレエ『ホフマン物語』よりアントニアの場や叙情的で洒落たセンスの横溢するシンフォニックバレエ『ソワレ・ド・バレエ』をはじめ完成度が高い。清里フィールドバレエ『タチヤーナ』はプーシキン「エフゲニー・オネーギン」のバレエ化。劇場版として磨きぬかれていただけに野外上演に少々不安もあったが杞憂に終り、夜空の下での魅力的な上演だった。東京バレエ団『ジゼル』はルグリ、マラーホフをゲストに迎え齋藤友佳理、吉岡美佳、小出領子が踊ったほか上野水香&高岸直樹が共演。小出、上野のジゼル・デビューが注目された。小出はルグリ、マラーホフと組んで初役とは思えないアカデミックな役作り。技術的にも破綻がなかった。上野も従来のイメージにない役柄だが、舞台内の現実に息づきつつ高い技量を披露し大役の任は果たした。トウシューズで踊っても全く足音がしなかったのは驚異的で方々で大評判。ロシア人の一級プリマでもなかなかそうはいかないだろう。