康本雅子についての記事

康本雅子コンテンポラリー・ダンスのダンサー/振付家として活動するほかMr.Chirdrenや一青窈ASA-CHANG&巡礼のPVを手がけるなど多岐にわたって活躍している。個人的には松尾スズキの舞台『キレイ』の初演で振付・出演をしたのを観て以来気になっている存在だ。謎めいた美少女というか神秘的な雰囲気を感じさせる容姿も魅力的だが、驚くべきはそのダンス。まさに不可思議としか形容しようがなく、独特の音感を持ち、しなやかで誰にも真似の出来ないような動きを生み出す。マイクを持って歌いだしたり、ひたすら馬鹿っぽいことをやったりと作風としては脱力系のテイストだが、一度観たら誰もが目が離せなくなる稀有の才能を持った踊り手なのである。
今年新春、NHKの「トップランナー」というテレビ番組で紹介されたことで一気に人気が爆発。春に予定されていた単独公演の前売券が放送直後、瞬殺でなくなったらしいというウワサは関係者やファンのあいだで大きな話題となった。社会的認知が高まったため、康本はさまざまの媒体で紹介される機会も増えているようだが、現在発売中の「週刊文春」10/2号の「仕事のはなし」というコーナーでも取り上げられている。本格的にダンスの道に進むようになった来歴や20代前半の世界放浪、帰国後、バックダンサーとして大物ミュージシャンのライブ等で踊り、ダンサーとしてエンターテイナーとして鍛えられたことなど既知のものもあるが豊富なエピソードが語られていておもしろい。
印象的なのは自身のダンスの信条として「カウントに頼らず、身体の気持ちよさを追求」すると語っていることだ。いわく究極的には“どんな振りでも自分のために、自分が気持ちよくやれなければ観客のためになるはずがない“。ショーやイベントであってもハイアートとして語られることの多いコンテンポラリー・ダンスの舞台であっても姿勢は同様だろう。康本の誰にも真似の出来ない独自の舞踊宇宙の生まれる源はそこにあるのかもしれない。若いダンサーや志望者にとって示唆に富む言葉ではないか。
なお「週刊文春」の記事が出たのとほぼ同時に「CINRA.net」でも康本のインタビューが掲載されている。あわせて読んでみると興味が尽きない。
※「世界を放浪した孤高のダンサー 康本雅子
http://www.cinra.net/interview/2008/09/22/172000.php