勅使川原三郎 身体実験劇場『ない男』

勅使川原三郎 身体実験劇場『ない男』
原作:ロベルト・ムジール「特性のない男」(加藤二郎・訳)
テキスト:宇野邦一
演出・振付・美術・照明・選曲・衣裳:勅使川原三郎
出演:勅使川原三郎/佐東利穂子/川村美恵/ジイフ/井手悠哉/林誠太郎/ナナ&ナイル
(2008年12月11日 シアターχ)

オーストリアの作家ロベルト・ムージルの未完の大作「特性のない男」を題材に、勅使川原三郎が演劇的アプローチを試みる身体実験劇場”が惹句だった。散文作品の断片的な言葉と身体とのせめぎ合いを試みている。KARASのメンバーも出演するものの多くは勅使川原と佐東のパートで占められる。脈絡なく思える散文の朗読のなかうごめくふたりの身体。哲学的、観念的な世界に陥ることなく詩的な美しさをたたえていたのが印象的だ。シンプルな舞台空間を用いながらも、試験管のようなオブジェを吊るし、暗闇のなかオブジェが発光する場など魔的なまでの美を現出。美術・照明等含めトータルに世界観を構築していくという勅使川原の志向がここでも顕著だった。