東京ELECTOROCK STAIRS『Wピースに雪が降る』

東京ELECTOROCK STAIRS『Wピースに雪が降る』
振付・演出・出演:KENTARO!!
出演:大江麻美子/金澤百合子/齊藤庸介/酒井幸菜/高橋幸平/LOCKY
(2008年12月25日 吉祥寺シアター)

ヒップホップ出身でコンテンポラリー・ダンス界でブレイクしつつあるKENTARO!!率いるカンパニーの旗揚げ公演。KENTARO!!はヒップホップベースのダンスをセンス良さげな選曲にあわせて踊り、笑えたりちょっと切なかったりといった等身大の感情を衒いなく表現して若い観客にアピールしている。オシャレ系、Jポップ的な軽いノリが特徴。初のカンパニー作品ということもあり群舞、ユニゾンも多かったがそれらのセンスがいまひとつよくない。動きだけでなく、前半、メンバー全員が着ていたグレーのシャツなんかも。総じて好きな曲にあわせて情景を並べただけに思えた。KENTARO!!には人を惹きつける親しみ易さ、エンターテイナーの資質はないではない。横尾忠則の展覧会の会場で行ったパフォーマンスでは観客も巻き込んでの当意即妙のパフォーマンスをみせて文句なく楽しかった。しかし、各種コンペやショーケースで披露したソロに顕著なようにウェルメイドではあるけれども計算されたわかり易さが気になることも。アート作品、ことにコンテンポラリー・ダンスでは、観るものに新たな価値観を抱かせるものでなければ観客は劇場に出向く必要はない。観客に委ねる余白、謎、問いかけがあってこそアート。その意味でいま1度表現者としての原点に立ち帰り新たな展開を模索してほしいと思う。