東京バレエ団「ベジャール・ガラ」

平成20年度文化芸術振興費補助金(芸術創造活動重点支援事業) 
モーリス・ベジャール追悼公演V/東京バレエ団創立45周年記念公演II
チャイコフスキー記念東京バレエ団ベジャール・ガラ」
振付:モーリス・ベジャール 振付指導:ジル・ロマン、小林十市
●『ペトルーシュカ
●『ドン・ジョヴァンニ
●『ボレロ

(2009年2月6日 ゆうぽうとホール)

この日はシルヴィ・ギエム(『ボレロ』)、首藤康之(『ペトルーシュカ』)、上野水香(『ドン・ジョバンニ』)というスターの揃い踏みが話題だったが、当日リハーサル中に首藤が足を痛めたためペトルーシュカ役は後藤晴雄に変更(首藤は9日からの別プロ『中国の不思議な役人』には出演予定との掲示)。ベジャール版『ペトルーシュカ』は仮面や鏡を効果的に用いつつ行き場のない迷宮に彷徨いこんだ青年の悲劇を描く。後藤は抑制された演技のなかにそこはかとない哀しさをにじませた。『ドン・ジョヴァンニ』はベジャール作品には数少ない、女性ダンサーの愛らしさを引き出した佳作。軽やかな動きとのびやかな身体のラインをみせた佐伯知香が抜群の出来ばえだった。奈良春夏も楚々とした雰囲気をみせ踊りも隙がない。上野はこのところ成熟した演技をみせ進境を示しているが、ここではチャーミングな魅力が全開した。ギエムがベジャール追悼のため封印を解いた『ボレロ』には会場総立ち。理想的なプロポーション、完璧な脚線美は相変わらず見事だが、さらに踊りに力強さと鋭さが加わっている。プリエやアティチュードひとつとっても動きの無駄のなさ精密さに感嘆。以前はそのストイックな演技にクール過ぎる印象も受けたが、今回は明晰で力強く、かつ優雅で凄絶なまでに美しい“メロディ”だった。
※なお、本公演の公演プログラムに紹介記事を寄稿しました。