東京バレエ団「ベジャール・ガラ」

平成20年度文化芸術振興費補助金(芸術創造活動重点支援事業) 
モーリス・ベジャール追悼公演V/東京バレエ団創立45周年記念公演II
チャイコフスキー記念東京バレエ団ベジャール・ガラ」
振付:モーリス・ベジャール 振付指導:ジル・ロマン、小林十市

●『ギリシャの踊り』
●『中国の不思議な役人
●『ボレロ

(2009年2月11日 ゆうぽうとホール)

ギリシャの踊り』は再演を重ねてすっかりベジャール作品らしくなったと思う。地中海の潮風を感じさせるような爽やかな佳編である。ソロは初役の長瀬直義。音楽性豊かで、かつしっかりと意志のある踊りを魅せて喝采を浴びていた。上半身が美しい。ノーブルダンサーとして知られた父、長瀬信夫の血を引く毛並みよさが感じられる。東京バレエ団の若手男性ダンサーのなかでも将来を嘱望される逸材のひとりだ。
中国の不思議な役人』は無頼漢の首領:平野玲、娘:首藤康之、中国の役人:中島周のキャストだった。ことさら倒錯美を強調するではないが艶やかな首藤、凄みがもう少し欲しいが芝居の上手さの光る平野、過剰さを排し役になり切った中島。私事で恐縮であるが以前、首藤を特集した雑誌(「プリンツ21」)に「首藤康之に続く、次世代の表現者たち」と題して大嶋正樹(元団員)、古川和則(現・新国立劇場バレエ団ソリスト)、中島周について首藤と絡めての原稿を寄せたことがある。時を経て今回、特別団員となった首藤とその後継者として躍進をみせる中島の共演には感慨深いものがあった。
この日の『ボレロ』の主演は後藤晴雄。04年、08年の欧州ツアーでは踊っているものの今回の公演が東京での初披露となる。明るく健康的で程好く色気のある“メロディ”だった。東京バレエ団ダンサー(男性)の踊る『ボレロ』の系譜において先輩の高岸直樹とも首藤とも味わいは違う。今後踊り込めばその魅力がいや増すだろう。
※なお、本公演のプログラムに紹介記事を寄稿しました。

prints (プリンツ) 21 2006年冬号 特集・首藤康之[雑誌]

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