ジョン・ノイマイヤー/ハンブルク・バレエ『椿姫』

ジョン・ノイマイヤーハンブルク・バレエ『椿姫』
音楽:フレデリック・ショパン
演出・振付:ジョン・ノイマイヤー
舞台美術・衣装:ユルゲン・ローゼ
アルマン・デュヴァール:アレクサンドル・リアブコ
マルグリット・ゴーチェ:ジョエル・ブーローニュ
老紳士デュバール:カーステン・ユング
(2009年2月18日 神奈川県民ホール)

言わずと知れた物語バレエの名作。19世紀パリを舞台に、ショパンピアノ曲を用いて、狂おしいまでの愛の物語が展開される。ヴェルディ曲のオペラとは違ってデュマ・フィスの小説に忠実な作りだ。劇中劇で上演されるバレエ「マノン」と重ね合わせることで主人公たちの悲劇を強調する構成も卓越している。全篇すばらしいけれども、やはりマルグリットとアルマンの踊る3つのパ・ド・ドゥに尽きる。所見日の主演はブーローニュとリアブコ。両者は既に2006年「世界バレエフェスティバル」において第3幕「黒衣のパ・ド・ドゥ」を披露している。ブーローニュの踊るマルグリットの繊細な叙情、リアブコ扮するアルマンの胸に秘めた熱い情熱に心揺さぶられた。待望の全幕上演においても、第1幕での、マルグリットがアルマンに惹かれ身を委ねるパ・ド・ドゥ、第2幕、互いの愛を確認しあう甘美なパ・ド・ドゥ含めて、ふたりの演技からは微細な感情の揺れが手に取るように伝わってくる。ノイマイヤーの『椿姫』は、ガラ・コンサートの定番のひとつであり、パ・ド・ドゥのみ上演されることは多い。近年、パリ・オペラ座バレエやミラノ・スカラ座バレエのレパートリーにもなった。しかし、本家の、巨匠の指導の行き届いたカンパニーの全幕上演に接するのは貴重な機会。アンサンブルの隅々にいたるまでノイマイヤーの振付や演出意図を知り尽くしている。至高の名演に酔わされた一夕だった。
↓ノイマイヤー版中心にバレエ「椿姫」について多角的に論じた特集掲載

DANCE MAGAZINE (ダンスマガジン) 2008年 12月号 [雑誌]

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