ダンスと音楽をめぐる関係の現在

創作ダンス、コンテンポラリー・ダンス作品を振付ける際、多くの振付家が足掛かりとするのは、まずどんな音楽を用いるかでしょう。音楽こそ創造の泉。クラシックから現代音楽、ジャズ、ロックにいたるまで無限といっていい広がりがあります。
そこで問題になるのが音楽著作権。著作物を著した際には特許などの産業財産権と同じく知的財産権が発生します。音楽の場合、作曲家・作詞家には著作権が、レコード会社や歌手・演奏者には著作隣接権があります。振付家が作品に既成の楽曲を使用する場合、内外のもの問わず使用許可を取って使用料を支払わなければなりません。無論、ほとんどの主催者やアーティストは使用料を払っているでしょう。ちゃんと。WEB時代の現在、舞台を観ての感想がリアルタイムでアップされます。記事のなかで作中どんな音楽が使われていたかが書かれることがありますが、それによって楽曲を無断使用していたことがバレたといったケースもあるとかないとか・・・。法的に定められた基準を満たし楽曲利用することは当然。ルーズな感覚はもう通用しないでしょう。
既成の楽曲を使用した場合、発生する権利料が振付家の悩みですが、記録映像等を商用に発売する場合はさらに料金が発生します。二次使用の許可をとるのが難しいケースも多いようで、ダンスDVD等が発売され難い一因となっています。そこで最近では作曲者に書き下ろしで依頼するケースも増えてきました。二次使用等の権利関係をクリアするのは容易になります。そして音楽家振付家の打々発止のコラボレーションが期待されます。既存楽曲を用いた場合、手垢にまみれたイメージしか喚起しないダンスも少なくありません。音楽家との協同制作は創造面で豊かな成果を挙げることが可能でしょう。コンテンポラリー・ダンスのネットワーク組織JCDNでは、2005年から「DANCE×MUSIC!」を立ち上げました。気鋭の振付家と音楽家を組ませての創作の場を提供するものです。公演を収録したものや新たに撮リ下ろした映像がDVDとして発売されてもいます。ダンスと音楽をめぐる環境について示唆に富む試みといえるのでは。
創作面、ビジネス面を含めダンスと音楽の関係や周辺環境について関係者は常に考えていかなければいけません。観客としてもそういったことを意識、厳しい目を光らせることができれば、ダンス界の発展を後押しすることになるのではないでしょうか。