松山バレエ団 顕彰

19回目を迎える(財)松山バレエ団顕彰の結果です。
なかなか渋い、実力派の舞踊関係者が選ばれているので紹介しておきます。
芸術賞:松岡伶子(松岡伶子バレエ団 主宰)
芸どころとして知られバレエ団が林立する名古屋において創立から50数年にわたって団・研究所を率い躍進を遂げてきたのが松岡伶子です。東海3県で生徒数常時1,000人を軽く越える生徒を育てつつバレエ団公演も定期的に行ってきました。チャイコフスキー三大バレエや『ジゼル』のほか『ライモンダ』『ラ・バヤデール』『石の花』といった上演機会の少ないロシア・バレエの大作も早くから上演。古典全幕のほかにも松岡の創作バレエとして『あゝ 野麦峠』などがあります。近年毎年夏に行われる「アトリエ公演」では石井潤、島崎徹、深川秀夫らを振付指導に迎え創作作品を積極的に上演。本年は篠原聖一&下村由理恵を招聘します。日本の創作バレエを語る上でも欠かせない会となってきました。この団の特徴はなによりも踊り手が抜群にいいこと。内外のバレエコンクールの上位入賞者は無数、現在では大岩千恵子、安藤有紀、伊藤優花、大寺資二、窪田弘樹そして新国立劇場への客演を通して絶大な注目を浴びる若手ホープ碓氷悠太はじめ多くの優れた踊り手を擁します。一流のダンサーを育て上げた実績からすれば松岡さんは日本で1、2を争う存在といって間違いないでしょう。
芸術奨励賞:本間祥公(本間祥公ダンスエテルノ 主宰)
藤井公・利子に学んだ本間祥公は、東京創作舞踊団の公演に出演しつつ各コンクールの1位を獲得。独立後は個人リサイタルや合同公演にて創作を発表しています。昨年、舞踊生活45周年を記念したリサイタルを開催しました。そのなかで藤井の団から独立時、師からはなむけに贈られた『ヒマラヤの狐』という作品を久々に改訂再演しました。静的なものから激しいものへと移りゆく動きの玄妙な変遷に孤高の境地、高い精神性を感じさせるもので、藤井公・利子にとっても代表作の一本といわれています。天才ダンサーとしての名声をほしいがままにしてきた本間ですが、踊ることに加え、後進の指導にも熱心。門下で子女の山口華子はまだ若いながらも創作に意欲をみせ、本年度の東京新聞主催全国舞踊コンクール創作部門にて見事第一位を獲得しています。踊り手として創作者として指導者として今後の展開も注目されるところです。
教育賞:黒沢輝夫・下田栄子(黒沢・下田モダンバレエスタジオ 主宰)
日本の現代舞踊のパイオニア石井漠の弟子でありその作品でも主要な役を踊った黒沢輝夫と夫人の下田栄子。現代舞踊界の重鎮ですが、コンテンポラリー・ダンスのファンには黒沢美香さんの父母といったほうが通りがいいかもしれません。黒沢・下田はこれまで全国舞踊コンクールはじめ埼玉、こうべといった舞踊コンクールの現代舞踊部門で60回近くの一位受賞を獲得しています。驚異的な数です。横浜・綱島にある稽古場は黒沢美香さんと仲間たちの公演会場としても使われていますが、足を踏み入れると、おびただしい数の賞碑や賞状が飾られ圧倒されます。舞踊団としても下田が水上勉原作シリーズで芸術祭賞を獲得したり、各種合同公演にも数多く出演。フランス、ギリシャなどで公演を行ってきました。実績からして教育賞というのは頷けるところ。
地道にしっかりとした活動をしてきた方を顕彰した印象。独自性が際立ちます。日本の舞踊界の多様性、奥深さをを示して興味深いものがあります。