ニムラ舞踊賞に笠井叡

長野県・諏訪市が主催するニムラ舞踊賞の第29回目の受賞者に舞踊家振付家笠井叡が選ばれました。地元紙等が既に報じています。
ニムラ舞踊賞は長野県上諏訪町(現諏訪市)生まれの舞踊家・新村英一(ニムラ エイチ/1897〜1979)の名を冠したものです。新村は1918年に渡米し、モダンダンスのルース・セント・デニス、テッド・ショーンらに師事。ニューヨーク・カーネギーホールにスタジオを開設し多くの舞踊家を育てました。日本の舞踊家の海外進出のパイオニアといえます。とはいえ、祖国日本への思いを終生忘れることなく、日本の後進舞踊人のためニムラ舞踊基金を設立しました。1973年にはニムラ舞踊賞が創設されています。分野を問わずダンス界に寄与した振付家やダンサー、プロデューサーらに賞が与えられてきました。現在は舞踊評論家の大御所、山野博大らが選考委員を務めています。
今回の受賞者の笠井は、若き日に故・土方巽大野一雄らとともに暗黒舞踏の創立を担いました。天使館を主宰、ドイツに学んでオイリュトミーを習得し、自らの踊りを「言霊舞」と名付け独自の活動を続けています。バレエファンには、ファルフ・ルジマートフに振付けたソロ『レクイエム』によってその名を知られているでしょう。ここ最近では、ピアニスト、高橋悠治とのコラボレーション『透明迷宮』を行ったり、コンテンポラリー・ダンス界の風雲児・黒田育世/BATIKに『バビロンの丘に行く』を振付けしています。
バレエ界や現代舞踊界の顕彰はともかく国による顕彰等が、舞踏・コンテンポラリーやジャンルの枠にとらわれず活動してきた人たちに与えられる機会は多くありません。設立当初コンテンポラリーに傾斜していた朝日舞台芸術賞は休止に。ニムラ舞踊賞は、近年、ケイタケイ(武井慧)、勅使川原三郎、大島早紀子、中村恩恵といった日本の舞踊界の枠に収まらない意欲的な活動を行ってきた人を受賞者に選んできました。笠井の受賞も「小さくても大きな賞」を標榜する同賞の面目躍如といったところでしょう。