佐多達枝作品常連・弟子筋たちが振付家として活躍

SNSから得た情報ですが、スイス在住の日本人ダンサー首藤泉作品が2010年度ローザンヌ国際バレエコンペティション・フィシャルコンテンポラリーヴァリエーションビデオに選出されたようですね。首藤さんは元ネザーランド・ダンス・シアター2の団員。2003年の来日公演でも踊っていましたから記憶に残っている方もいらっしゃるでしょう。
首藤さんは東京出身、幼少から佐多達枝・河内昭和バレエスタジオにてクラシック・バレエを学んでいます。佐多さんは、いわずと知れた日本バレエ界の巨匠振付家。先日も上演時間2時間を越える大作・合唱舞踊劇『ヨハネ受難曲』を発表、衰えを知らぬ創造エネルギーを見せつけ観るものを圧倒しました。日本のバレエ界は世界の一線で活躍するダンサーを無数に輩出していますが、振付というクリエイティブ面ではまだまだ…。そんななか、佐多さんの弟子筋や佐多作品を踊ったダンサーから現在の日本の創作バレエの中核を担うべき存在や次代のホープが出ているのは目を惹きます。
堀登、坂本登喜彦、堀内充らは働き盛り。佐多作品を踊る前に創作でも名を成した人も含まれますが、佐多作品に出演を重ね大きな役柄を踊っており、その影響も少なくないのでは。佐多作品に多く出ている谷桃子バレエ団のベテランプリマ高部尚子は昨年『ライトモティーフ』を発表して好評、今夏『ウエスタンゲート』をバレエ協会公演に提供しました。同じく谷バレエ出身で近年の佐多作品には欠かせない石井竜一も2003年の『RIVER』以降寡作ながらも秀作を手がけており、2007年発表の『シャコンヌ』はスペイン古楽にあわせ豊富な現代バレエの語彙と抜群の音楽性を発揮した傑作。モダン畑ながら佐多作品常連の関口淳子も昨年から自作ソロ等を発表して高評を得ています。佐多門下の若手でコンテンポラリー・ダンスの神村恵作品に出ている遠藤綾野も今春習作を発表。未知数ながら型にはまらない奔放さが際立ち魅力的でした。
欧米では、現代バレエの父と称されるジョン・クランコのもとからケネス・マクミラン、イリ・キリアン、ウィリアム・フォーサイスら超一流振付家が生まれ、さらにその孫弟子的存在が現在のダンス界を担っています。日本では佐多さんがそういった存在になりつつあるのではと思います。優れた踊り手=優れた振付家となるとは限りません。とはいえ当代一流の振付家の作品に出演、その創作過程を体験し学び思考することで獲得できる舞踊語彙や音楽性は得難いものでしょう。佐多門下、佐多作品を踊ったことのある振付家たちは、ダンサーとしての経験や想像力を大切にしつつ知的に作品を組み立てる力量を発揮しています。今後もその動向が注目されるところです。