不況下にできること

今秋に来日するニューヨーク・シティ・バレエが先日コール・ド・バレエのダンサー11名を解雇しました。入場料収入だけでは団員・スタッフに給料を払うことはおろか、舞台を制作し定期的に公演を打つことすら容易ではないのは世界共通。公的な助成金や民間企業・個人からの援助なしに舞台芸術は成り立ちません。アメリカ各地には大小さまざまのバレエ団やカンパニーが存在しますが大方の経営は苦しいようですね。米自動車最大手のゼネラル・モーターズ(GM)が6月1日経営破綻したというニュースは世界中に衝撃をあたえましたが、経済不況の打撃は舞台芸術にもおよんできています。
とはいえ日本の舞踊界は欧米と違って、経済面においてプロフェッショナルに相応しい報酬を受け活動するアーティストは数少ない。なのに、公演単位のものや赤字補填が精一杯とはいえ文化庁や民間の助成金も少なくないためか、不況でも公演数は一向に減る様子はなく表面的には舞踊界は活況に思えます。ただ、アーティストたちがプロとして社会的・経済的に評価される場は確立されていないのが現状です。
無論、報酬さえ充分ならプロといえるのではなく、芸術性や技術力、上演水準の質に対しての評価も重要であり、日本のアーティストや団体のなかには一流のものも少なくありません。ただ、社会に対するアピールやプレゼンテーションがまだまだ弱いのは否めない。舞踊界やアーティストの社会的・経済的地位を向上には、バレエ界でいう、カンパニーやスタジオの統合再編成といったドラスティックな変化も避けられないでしょうが、まずは個々のグループ・アーティストの努力の積み重ねが大切に思います。
観客へのアピール、公演動員の方法、情宣先の再検討と改めて見直すことは少なくないのでは。チラシさえロクに撒かない“公演”もありますが、発表会ならいざしらずプロを自認するのであれば、それは恥ずべきことではないでしょうか。公演チケット代を値下げしたり、学生券を設けたり、新人を抜擢するシリーズ企画を設け安価な通し券を発売したりといった経営努力を行う団体も出てきているのは好ましいですね。観客を育てるのも仕事。手弁当で厳しいなか日々の活動・運営に追われるのは致し方ないのは理解できます。でも、各団体・アーティストは、社会や観客に対して視野を広げ、目先の利益利害のみならず先を見据えた展望をもって活動していってほしいと思います。