V.I.I.M project、深谷正子、金魚(鈴木ユキオ)、Monochrome Circus+じゅんじゅんSCIENCE、手塚夏子

BABY-QNibroll presents 「V.I.I.M project」
映像作家が身体表現や音響を取り込んで立体的なパフォーマンスを行うという試み。高橋啓祐 演出・映像『ネコロール』と斉藤洋平 演出・映像『TIGER.TIGER』の二本立てです。『ネコロール』では、ニブロールの大きな魅力たる矢内原美邦の振付とダンス、高橋の映像が前面に出ていました。大橋可也作品でおなじみのミウミウのダンスも面白い。ただ、ニブロール的に新機軸を打ち出したという印象はあまりなかったかも。『TIGER.TIGER』は、斉藤洋平の映像を軸に、伊東篤宏とガルペプシの音楽、ケンジル・ビエンのダンスが掛け算となって刺激的なパフォーマンスとなっていました。レーザー光線の使い方も絶妙で立体感と奥行きを醸しだして圧倒的。映像を軸としたテクノロジーと身体表現とのコラボレーションとして先鋭的かつ楽しめるイベントでした。
(2009年7月20〜21日 六本木・Super Deluxe)
ダンスの犬 ALL IS FULL『CHAIN2』
藤井公・利子門下を経て独立したベテラン深谷正子のソロ。美術家、関直美とのコラボレーションでした。直方体のようなビニール状のオブジェのなかに深谷が佇む時間が続きます。緊密なピーンと張りつめた空気に心地よい緊張感を覚えました。
(2009年7月22日 シアターΧ)
金魚(鈴木ユキオ)『言葉の縁』
トヨタコレオグラフィーアワード2008受賞者公演。志気高い力作です。禁欲的・クールな鈴木のソロにはじまり、女性群舞や安次嶺菜緒のソロが間断なく配される前半は息苦しいくらいの密度の濃さ。ストイックな緊張感が張りつめるのは従来の鈴木作品同様ですが、鈴木のソロ軸のユニットスタイルからカンパニー的な作りを模索したのが見て取れます。己の表現の核を大切にしつつ新境地に挑む姿勢は頼もしい限り。久住亜里沙や加藤若菜らモダン出身ダンサーが参加しましたが、ユキオメソッド(鈴木忠志の鈴木メソッドと区別)になじんでいて、その技量と対応能力の高さに舌を巻きました。そして何よりも安次嶺の身体を張った入魂のパフォーマンスが圧巻。ただ、暴力的で残酷に思える景から雪が舞い降り叙情的、繊細な景への流れれがやや見え難いかも。80分ほどの上演時間が長いと感じる向きもあるでしょう。でも、どこを切っても鈴木の血が噴き出してくるような、全力投球、熱のこもった骨太さがたまらなく魅力的でした。
(2009年7月24〜26日 シアタートラム)
Monochrome Circus+じゅんじゅんSCIENCE「D_E_S_K」
Monochrome Circusの掌編ダンス『水の家』(振付:坂本公成)は、小さなテーブル上で男女2人が絡む展開です。動と静が交錯して生まれる危うい緊張感を捉えて圧倒的な完成度を誇っていました。傑作。活動休止中の水と油・じゅんじゅん(高橋淳)のソロ『deskwork』は、寝転がって主に上半身の動きでみせるあたりは面白いのですが、立ち上がって踊りだすとやや単調にも感じました。『緑のテーブル』は、じゅんじゅんがMonochrome Circusに振付けたものです。生の芝生を敷いたテーブル上で男女2人づつが入り乱れるパフォーマンスはスリリング。最後まで飽かせませんでした。
(2009年7月21〜26日 こまばアゴラ劇場)
実験ユニット第三弾『人間ラジオ2』@神楽坂die pratze
手塚夏子を久しぶりにフォロー。手塚を最初に観たのは2002年春、横浜での『私的解剖実験2』なので比較的早いうちから観ていましたが、ここしばらくはご無沙汰でした。実験ユニットは、手塚と音楽家のスズキクリ、照明の中山奈美のコラボレーション。チューニングの調節がテーマらしく、手塚のダンスと、ラジオの音、照明が対等に並列することでダンスと音楽の水平な関係を示したりハプニング的な展開を導こうとします。文字通り実験といった趣であり、観る人を選ぶパフォーマンスには感じました。
(2009年7月25〜26日 神楽坂die pratze)