『バレエ名作ガイド』

“バレエの魅力の中心はダンサーです”これは、このたび新書館から刊行された『バレエ名作ガイド』「鑑賞のポイント」の最初の言葉です。主役、ソリスト、コール・ド・バレエに至るダンサーたちの魅力を引き出す作品こそ名作として残る、という当たり前のようで見過ごされがちな視点から代表的なバレエ作品16作を読み解いた一冊。
あらすじ紹介は舞台の展開に即して書かれ便利であり、世界のスーパースターたちの踊った舞台写真(瀬戸秀美)も豊富なのがうれしい。そして眼目が三浦雅士氏による作品解説。『白鳥の湖』『眠れる森の美女』『ジゼル』『マノン』『椿姫』といった名作16作を丁寧に解きほぐします。さらに、順を追って読めば、19世紀から現在に至るまでのバレエという芸術の進化・深化してきた過程が手に取るように理解できます。まずプティパによる古典形式の確立ありき。ついで、バレエ・ブラン(白のバレエ)において踊り手が演技の解釈を深めてきたことによってバレエという表現が人間感情の機微をも何よりも鋭く深く伝えうるものとなります。その延長上にチューダー、クランコ、マクミラン、ノイマイヤーといった名匠の傑作が生まれました。その流れが鮮やかに示されます。
さらには「バレリーナの語る核心」と題して名プリマたちが名作を踊った際の体験や秘伝について語るページもあります。ダンサーがいなければいい作品は生まれない。名作とは常に発見があり、感動を与えてくれるもの。すばらしいダンサーとすばらしい作品が生む感動の源泉に迫った、バレエファン必読のガイドといえるでしょう。


バレエ名作ガイド―ダンスマガジン編

バレエ名作ガイド―ダンスマガジン編