JCDN「踊りに行くぜ!!」vol.10 in前橋公演

JCDN主催「踊りに行くぜ!!」vol.10前橋公演に行ってきました。
前橋では一度のお休みを除いて10年ずっと「踊りに行くぜ!!」が開催されています。主催の前橋芸術週間が中心になって市内各地のスペースで公演を行い、巡行型公演や屋外での上演も珍しくありません。
今年は『踊りに行くぜ!! with VIDEO DANCE』の一環として「踊りに行くぜ!!」に出演するアーティストのビデオダンスを製作し、映像作品と生のダンスを上映・上演しました。映像は飯名尚人が公募スタッフとともに前橋にて撮影。振付・出演:長内裕美『concord』、振付・出演:目黒大路『この物体』の映像版+ライブ版の上演となったわけです。名画座「シネマまえばし」での映像上映の後の模様を簡単に報告します。
夕闇に包まれる頃、名画座から前橋中央商店街へと誘導され、商店街沿いにある、こんもりとした芝生の広場へと案内されます。そこで長内のパフォーマンスが始まりました。2009年横浜ダンスコレクションR「横浜ソロ×デュオ<Compétition>+」にて審査員賞受賞した作品。装置・道具は小さなイスだけ。振り付けはさほど手を加えていないようで、ゴロっと転がっていたり日常的な仕草のようなものとダンサブルな動きが淀みなくもときにアクセントのある展開を生んで目が離せなせません。クラシックバレエの素養があり、大学ダンスやH・アール・カオスで活躍した経験を持つ長内は、豊かな私的感覚と確かな技量をあわせ持っているだけに、幅広いオーディエンスの支持を得られる創作を生んでいくことが期待できそう。
長内の終演後、商店街をさらに進み、信号を渡った筋に誘われます。そこはアーケード街なのに薄暗く電灯もあまりついていません。しばらくすると、何十メートルも向こうから全身白のダンサーらしき影がごそごそ動いているのが目に入ります。目白です。腰を落としゆっくりと横に横に斜めに斜めにとゆっくり蟲のようにうごめいていきます。少しカーブした通りをゆっくりと近づいてくる姿に距離感が麻痺させられるような感覚を覚えました。人影まばらな商店街ですが通行人は目白の姿を確認すると怖がって避けていったり・・・遠巻きに観ていたり・・・。目白が観客のすぐそばにきてもスルーしてその先を進み、信号を渡って観客から遠ざかっていって幕となります。日常的な空間に闖入した異物がもたらすスリルのようなものを感じさせられました。
「踊りに行くぜ!!」は10年目に達し、各地のスペース間の巡回を通してコンテンポラリー・ダンスの紹介と地域からの新たな才能の発掘を行ってきました。コンテンポラリー・ダンスがある程度の社会的認知を得たこと、また、さまざまな才能が登場して新しいもの探しが一段落したことから、次なる展開が注目されます。文化庁の芸術団体人材育成支援事業を受けているものの巷で話題の事業仕分け問題もあって来年以降の見通しはどうなることか。しかし、ダンスと社会を結びつけ新たな出会いを生み人と人の関係や地域社会を活性化させるプロジェクトとして今後も続くことを願ってやみません。