現存する最古の巨匠 ローラン・プティ作品の魅力
新年の幕開けを飾る新国立劇場「ニューイヤーオペラパレス ガラ」が今年も行われました。バレエガラとオペラガラの二部構成による公演であり、すっかり定着してきた感があります。今年、バレエ部門で上演されたのが新制作『グラン・パ・ド・フィアンセ』(振付:ジャック・カーター、ステージング:牧阿佐美)に加え『こうもり』より《グラン・カフェ》(振付:ローラン・プティ)でした。『こうもりは』一昨年の同ガラでも抜粋が上演されています。ヨハン・シュトラウス二世の、心浮き立たせてくれるような音楽が新春気分を盛り上げてくれます。オペラ・ファンにも親しみやすいバレエではないでしょうか。
『こうもり』といえば新国立劇場が2002年に新制作。まさに同時期にアメリカン・バレエ・シアターが来日して『メリー・ウィドウ』を上演していましたが、それに劣らない華やかで充実した公演だったことが思い出されます。2006年の再演を含めると、アレッサンドラ・フェリ、草刈民代、湯川麻美子、真忠久美子の主演で観ました。それぞれ妖艶で嫋嫋たる色香を振りまいて魅力的でしたし、再演時のウルリック役に小嶋直也が急遽登板した際のサプライズとその見事な演技(美しすぎる脚先!)は今なお忘れることができません。新国立劇場ではその後プティの『コッペリア』をレパートリー化して早くも昨年再演していますが、『こうもり』の全幕上演も期待したいところです。
プティといえば、バレエ&ダンス界において現存する数少ない巨匠と呼べる存在。同じフランス人で好ライバルであったモーリス・ベジャールやピナ・バウシュ、マース・カニングハムも鬼籍に入りました。近年、大きなプロジェクトの話は聞きませんが2006年秋には草刈民代に新作を振付けたりもしています。10年ほど前では、パリ・オペラ座バレエ団 に『クラヴィーゴ』、ボリショイ・バレエに『スペードの女王』、牧阿佐美バレヱ団に『デューク・エリントン・バレエ』という風に大作を連打、健在を示していました。
プティ作品は、ベジャール作品などに比べ時に「軽い」とも評されますし、プティは天才肌の器用な才人、職人タイプとも思われがちです。でも、初期の『若者と死』や『アルルの女』のような実存的で美と死を主題としたものから音符が踊りだすようにスウィングするダンスが魅力的な『デューク・エリントン・バレエ』まで、テーマの深さや音楽性の豊かさは得がたいものがあります。現代のバレエはとかく難解であったり、間口の狭いものも少なくありません。劇場・ミュージックホールといった劇場文化を知り尽くし、観客を楽しませる術に長け、かつ人生の機微をさり気なく気づかせてくれるプティの存在は貴重。以前は牧阿佐美バレヱ団が頻繁に上演してくれていましたが(『ピンク・フロイド・バレエ』『ノートルダム・ド・パリ』等)、また多くのプティ作品を堪能させてほしいものです。
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ローラン・プティ―ダンスの魔術師 (バレエ・オン・フォトグラフ)
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