『ジゼル』の現代版など

社団法人日本バレエ協会主催の「J・B・A ヤング・バレエ・フェスティバル」は春の恒例行事して定着し、今年で21回目を迎えました(1月29日 ゆうぽうとホール)。日本バレエの次代を担っていく若くて活きのいい感性に出会えるのが魅力的です。また、近年では新進振付者に創作発表の機会を与える人材育成の場としても注目されましょう。今年はおなじみの『パキータ』(古典)『卒業舞踏会』(近代バレエ)を挟んで金田あゆ子の新作『完璧なお城』が発表されました。ロマンティック・バレエの名作『ジゼル』に想を得たもので、夜の深い森のなかウィリたちがたくさん登場。橘るみ扮するジゼルを思わせるウィリの愛憎や悲しみといった感情が描かれ、橘は男に裏切られてもなお変わらぬピュアな愛を清冽なリリシズムをもって演じて印象に残りました。
『ジゼル』というバレエは、この世とあの世という二元世界を対比させた台本の見事さが際立っていて、随所に様々の謎が含まれ奥深いのは周知のとおり。古典版の上演は各団体が絶え間なく行ってます。しかし、『完璧なお城』のような『ジゼル』というバレエからインスピレーションを受けた創作がもっとあっていいのでは。海外のものでは、精神病院を舞台にしたマッツ・エックの改訂版や現代風ファンタジーに変えたマルシア・ハイデによる『ジゼルとウィリーたち』は有名で大当たりを取っています。国内では、エック、ハイデのもののような大作ではありませんが数年前に谷桃子バレエ団のクリエイティブ・パフォーマンスで発表された岩上純の『レクイエム』が、『ジゼル』の男女裏返し版の趣のあるドラマを展開したコンテンポラリーとして話題を呼びました。未見ながら西島千博らが出演した『ダンス・ギャラクシー/ジル』も『ジゼル』の現代版のようです。
創作のモチーフとして古典に材を得ることはひとつの見識でしょう。鉱脈にぶつかる可能性を秘めているだけに、日本人創作者のさらなる挑戦に期待したいものです。


ジゼルという名のバレエ (クラシックス・オン・ダンス)

ジゼルという名のバレエ (クラシックス・オン・ダンス)