バレエ・ガラにおいて現代作品上演が増加傾向?

このほど2009年春にパリ・オペラ座バレエ団を去ったマニュエル・ルグリを中心とした「マニュエル・ルグリの新しき世界」という公演が行われました。Aプロでは、ルグリが元ベジャール・バレエのパトリック・ド・バナに振付を依頼して東京バレエ団と共演するという企画が展開され、Bプロでは、かつてルグリとペアを組んでいたシルヴィ・ギエムとの奇跡的な再共演はじめパリ・オペラ座のエトワールら世界のスターたちが競演するガラが行われました。ド・バナ作品3本を上演したAプロは別にして、注目したのはBプロにおいて上演された10演目に、いわゆる古典バレエのパ・ド・ドゥがただのひとつもなかったことです。バランシン『チャイコフスキー・パ・ド・ドゥ』、ロビンズ『アザーダンス』、プティ『失われた時を求めて』より"モレルとサン・ルー"、マクミラン『三人姉妹』、キリアン『優しい嘘』、フォーサイススリンガーランド』といった現代バレエの巨匠振付家のマスターピースからド・バナやルグリの創作まで幅広い現代作品が上演されました。
わが国のバレエ界では、古典バレエ志向が強いのは否めませんが(一概に悪くないですが)、バレエ・ファン――来日バレエや国内の大手バレエ等を見る観客にとって現代作品への抵抗は、もはやさほどないのでは。昨夏盛況だった「世界バレエフェスティバル」や一昨年の「エトワール・ガラ」等では現代作品上演の比率が高く、水準の高い上演には熱狂的な拍手が送られていました。今年1月にも彩の国さいたま芸術劇場にて行われたバレエ・ガラ公演もイリ・ブベニチェクやフォーサイス作品によるトリプル・ビルでしたが話題になっています。コンテンポラリー・ダンスの観客層も現代バレエに関心を高めているでしょう。舞踊業界のなかで、バレエ/コンテといった線引きがあるのはやむをえない面もあるにせよ、見る側からすれば境界は緩やかになりつつあるのでは。また、こういったガラに若手のバレエ/現代舞踊のダンサーや振付家が足を運ぶ姿を、ここ1、2年以前にまして散見するようになりました(あくまで実感ですが)。刺激を受け、吸収できる部分は吸収して自身の創作等に活かしてもらいたいものです。
今後も来る5月に行われる「マラーホフの贈り物」でも以前よりも現代作品が上演される予定となっていますし、一部予定演目の出ている7〜8月の「エトワール・ガラ」でも同様になるのではないかと思われます。プロモーター関係者は海外のダンス事情にも詳しく、また、観客の期待するもの・さらにその先を見越したアーティストや作品を紹介してくれているのはありがたい。こういった流れがバレエ/コンテといった枠を取り払い、観客の興味の幅を広げ、国内団体においてもバレエ=古典というだけでなく創作/コンテンポラリーをもっと上演できるような環境につながっていくとよいな、と感じています。


失われた時を求めて』より"モレルとサン・ルー"振付:ローラン・プティ


『三人姉妹』振付:ケネス・マクミラン


スリンガーランド』振付:ウィリアム・フォーサイス