地域団体・アーティストによる国際交流が活発化

舞踊に限りませんが、多くの芸術文化が首都圏一極集中になりがちです。そんななかコンテンポラリー・ダンスでは、地域から世界へと発信していくプロジェクトがどんどん進行しています。先日、福岡において西日本中心とした各地のアーティストと韓国の最新ダンスを上演する「福岡ダンスフリンジフェスティバル」が行われ、神戸ではDANCE BOXと文化庁共催による「KOBE-Asia Contemporary dance Festival #01」が催されました。かつて関西では、いまは無き舞踏の白虎社が精力的に海外公演を行っていましたが、現在も京都に拠点を置くJCDNによる国際交流事業が活発。いまをときめく新潟発の金森穣/Noismも海外招聘公演をたびたび行っており、最新作『Nameless Poison〜黒衣の僧』は、モスクワ・チェーホフ国際演劇祭との共同制作作品です。
1990年代半ばから活発な展開をみせてきたコンテンポラリー・ダンスに対し、一部の保守層が検証も無く停滞気味というようなことを指摘したりもします。果たしてそうでしょうか。より成熟した視野の広い展開が見られるのでは。なかでも、地域と海外とのダイレクトな交流はその最たるものでしょう。日本の現代ダンス界が戦後何十年かかってもなしえなかったことが少しづつですが変わり、動き始めているとみるべきに思います。
その傾向はバレエにおいても顕著です。今年に入ってからすでに京都の2団体が海外公演を実施。桧垣バレエ団がポーランド公演を、全京都洋舞協議会がメキシコ・グアダラハラ公演を行いました。前者は地元のベートーヴェン財団との共催公演、後者は文化庁の国際交流支援事業を受けての公演でした。さらに4月には神戸の貞松・浜田バレエ団が中国公演を行います。北京、四川、広東で3公演。日中文化教育経済関西交流会・中国全国総工会職工対外交流中心の主催によるものであり、神戸と同じく大震災に見舞われた四川や兵庫県の友好都市である広東との国際親善事業とのこと。他にも近年、海外との国際交流を行う地域で活動するバレエ団体が増えています。
文化芸術による国際交流は現地の人々に直に触れ、心の深い部分に訴求しえます。芸術を通して日本人の国民性や文化性(伝統芸能やジャポネスク趣味を打ち出したものでなくとも、おのずと日本人らしさは出るもの)を知ってもらえることは得がたい。政治家や財界人が何十年かかっても果たせないことかもしれません。それを一夕にして果たせるのが芸術の力であり、だからこそ真のアーティストは尊敬されるべき存在。頭が下がります。ことに地域の団体・アーティストの活動のなかには端倪すべからざるものが少なくありません。地域から海外へという動きが東京のアートシーンをも刺激し、芸術文化の重要性を世に広く知ってもらえるようになるようにとも願ってやみません。