[PLAY」チェルフィッチュ『ホットペッパー、クーラー、そしてお別れの挨拶』欧州ツアー&東京公演

このところ、フェスティバル/トーキョー彩の国さいたま芸術劇場招聘ダンス公演においてヨーロッパの最前線で活躍するアーティストの新作がリアルタイムといっていいくらいの間を置かないタイミングで上演されるようになっている。従来の拝外主義やブランド・カンパニー信仰といったものとは一線を画した、舞台芸術の活発な欧州の最前線・同時代の表現をいち早く共有できる機会として大変得がたいものがあろう。
いっぽうで、わが国の演劇やダンスのアーティストの作品の海外紹介の現状はいかがなものだろうか。ダンスでは、2年に1度パリ市立劇場で新作を発表してワールドツアーを行う舞踏集団・山海塾を筆頭に、勅使川原三郎レニ・バッソなどは欧州でツアーを行っているし、東野祥子のBABY-Qなども海外公演は少なくない。とはいえ、現代日本のパフォーミングアーツの先端として、いま、欧州で熱い注目を浴びているのは、なんといっても劇作家/演出家/小説家の岡田利規の主宰するチェルフィッチュだろう。
演劇とダンスの境界を軽々と行き来して斬新なパフォーマンスを行っているが、岸田國士戯曲賞を受賞した代表作『三月の5日間』や新国立劇場制作による『エンジョイ』などは欧米でも上演され反響よんでいる。そして、最新作『ホットペッパー、クーラー、そしてお別れの挨拶』は、よりワールドワイドなプロジェクトとして瞠目すべきものがあるといえよう。世界的に注目集めるパフォーミングアーツ集団・リミニ・プロトコルやコンスタンツァ・マクラス/ドーキーパークがレジデントアーティストとして活動拠点にしているHAU劇場(ベルリン)との共同制作によって2009年10月に世界初演されたというのがまずもってすごい。さらには今年国内外10都市のツアーを予定しており快挙といえる。
同作品は、「ホットペッパー」「クーラー」「お別れの挨拶」の3つの短編により構成され、「TOYOTA CHOREOGRAPHY AWARD 2005〜次代を担う振付家の発掘〜」最終選考会にノミネートされ話題を振りまいた『クーラー』に二つの短編を加えた意欲作のようだ。欧州ツアーに先立って5月に東京・ラフォーレミュージアム原宿にて日本初演を行う。ヨーロッパの前衛的な演劇祭やアートフェスティバルにてすぐさま取り上げられツアーを行い、同地の先鋭的なパフォーマンスとリアルタイム、同じ地平で紹介されるというのは、わが国の舞台芸術史上においても画期的だ。後に続くアーティストの道標となるためにも成功を心から祈りたい。まずは5月7日から開幕の東京公演が楽しみだ。
チェルフィッチュホットペッパー、クーラー、そしてお別れの挨拶』

制作:precogのチャンネルより


三月の5日間

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