NBAバレエ団・第7回トゥールヴィヨン公演『ジゼル』

NBAバレエ団『ジゼル』全幕(6月19、20日 メルパルクホール20日所見)。ジゼル役には当初、パリ・オペラ座バレエ団のベテラン・エトワール、デルフィーヌ・ムッサンを招聘する予定だったが、右足の怪我のためキャンセルとなった。変わってオペラ座からプルミエ・ダンスーズのミュリエル・ズスペルギーが来日し、アルブレヒト秋元康臣と共演した。ムッサンの降板は残念だったが、ズスペルギーの全幕主演を見る機会はなかなかないので、パリオペフリークからすればこれも貴重なものになったとはいえる。
さて、今回の『ジゼル』全幕は、「トゥールヴィヨン公演」という枠で行われた。これは2004年に始まった企画であり、気軽にバレエに接してもらえるようにとの意図があるらしく、チケット代は低価格に抑えられている。貴重な古典作品の復刻や近現代バレエの上演に取り組んできたNBAバレエ団のレパートリーのなかから定評あるものを中心に上演を続けてきた。今年はS席6,000円、A席5,000円、学生席3,000円という価格だが、今回はオーケストラ付きの全幕公演であり、破格の値段といってもいいだろう。
この公演は文化庁の文化芸術振興費補助金(芸術創造活動特別推進事業)を受けている。これは高水準の舞台芸術活動が対象になるもの。採択を受けて公演の規模が拡大したカンパニーも少なくない。ただ、昨秋の「事業仕分け」関連の議論でも話題になったように、公的助成をうける公演は、芸術性や芸術理念を追求することのみならず公益性が問われるようになってきている。広範な観客に向けてオープンな制作体制が求められ、観客・納税者への還元も意識されてしかるべきということである。
人材育成への投資は当然ながら舞台芸術の成果を数値で測ることも難しいしナンセンスともいえる。しかし、公益性に関してはある程度の費用対効果は検討できる。助成額等も今年度から一般公開されるようになったこともあり、外部の目から見てのチェックも盛んになっていくだろう。芸術性と公益性のバランス、地に足着いた活動も大切だ。NBAバレエ団はNPO法人として芸術性や舞踊史上の意義を追求する意欲的なプログラムを組むと同時に、7年前、文化庁の重点支援事業をはじめて受けた年からトゥールビヨン公演を行ってバレエの普及、社会への発信に努めてきた。こういった活動方針はひとつのモデルとなり得るし、そういう流れは広がっていくのではないだろうか。