小林十市のダンサー復帰!!について思うこと

東京バレエ団が12月にモーリス・ベジャール振付『M』を5年ぶりに再演する。先日、その配役が発表されたが、狂言回し役であるシ(死)役に、初演キャストである小林十市が特別出演するというニュースにはかなりの反響があるようだ。確かにサプライズ!
ベジャール・バレエ・ローザンヌの中心ダンサーとして活躍したが腰の故障のためダンサー生活を続けることができなくなった小林は、現在、商業演劇や映画を中心とした俳優として活躍している。同時に、指導者としてベジャール作品の振り付け指導をパリ・オペラ座バレエ団、東京バレエ団等に対して行ってきた。東京バレエ団の『中国の不思議な役人』も再演時に小林の指導を得てさらに密度の濃い仕上がりになったのは印象深いし、上野水香に『ボレロ』のメロディ役を最初に指導したのも小林である。
小林については2006年9月刊行「プリンツ21」冬号・首藤康之特集号に紹介記事を寄稿した(ちなみにこの号はamazonではプレミアの付く人気となっているようだ)。首藤の盟友的存在の小林は当時、ダンサーを引退し、演劇役者として売り出していた頃だ。ダンサーとしての来歴と魅力、今後の展望について触れたのだが、そのなかで“踊り手として再び舞台に立つ日も近い将来訪れるかもしれない”と記した。これは、各種インタビュー等で本人が語っているように、腰の故障によってプロとして365日間厳しいレッスンやリハーサルに耐え舞台に立つことは無理になったが、まったく踊れなくなったわけではないという状況を踏まえ、希望的観測も交えて書いた。それから4年してダンサー復帰が現実のものとなろうとしているのは感慨深い。成功を願っている。


prints (プリンツ) 21 2006年冬号 特集・首藤康之[雑誌]

prints (プリンツ) 21 2006年冬号 特集・首藤康之[雑誌]