顕彰・舞踊賞ガイド

秋の芸術シーズンたけなわだが、間もなく年末となり、そして年が明けると各舞踊賞や顕彰の発表がどんどん行われていく(秋の叙勲はまもなく発表)。各賞について一般にはさほど知られていないはず。洋舞に関する主なものを簡単ではあるが紹介してみようと思う。コンクールやコンペは基本的に除外。順不同。敬称略。
【公的な褒章など】
文化勲章
科学技術や芸術などの文化の発展や向上にめざましい功績のある者に授与される。洋舞ではまだ受章者なし。
文化功労者
文化の向上発達に関し特に功績顕著な者に対して授けられる。洋舞では、森下洋子(1997年)、島田廣(2002年)、牧阿佐美(2008年)、小島章司(2009年)が受けている。
旭日小綬章
勲四等に当たる。現在の洋舞界の大御所では横井茂、石田種生、佐多達枝や西田堯、若松美黄、折田克子アキコ・カンダ小松原庸子らが受章。
紫綬褒章
学術、芸術、スポーツ分野の功労者に授与される。森下洋子のような異例の飛び級(日本芸術院賞等を若くして受賞)は例外として、ここを受けないと上記の褒章の対象にならないとみていい。バレエでは最近、下村由理恵が比較的若い年齢で受章して話題に。コンテンポラリー・ダンスの分野では勅使川原三郎が受けている。
文化庁長官表彰
長年の文化活動により顕著な業績を挙げた芸術家・文化人等に対して文化庁長官が表彰。批評家も受けており桜井勤、福田一平、山野博大らが顕彰されたようだ。
芸術選奨文部科学大臣
文化庁管轄。演劇、映画、音楽、舞踊、文学、美術、古典芸術、放送、大衆芸能、評論の10部門に分かれ、それらの分野において顕著な活躍を見せた人物に贈られる。最近は洋舞/邦舞に分かれたが以前は同じだった。バレエでは吉田都、下村由理恵、斎藤友佳理、熊川哲也、岩田守弘ら活躍目覚ましい現役が受けている。コンテンポラリー・ダンスでは勅使川原三郎のほか振付家としては異例の若さでNoismの芸術監督である金森穣が、舞踏では山海塾を主宰する天児牛大が受賞。
芸術選奨文部科学大臣新人賞
上記の賞の新人部門。洋舞/邦舞から年間1名がデフォルト。なかなか貰いにくい。最近ではコンテンポラリーダンサー/振付家の平山素子が受けた。
文化庁芸術祭賞
毎秋行われる。公募制。舞踊部門は現在、関東/関西と部門が分かれる。現在は大賞・優秀賞・新人賞の3賞制定。近年バレエで大賞を受けた団体・個人は小林紀子バレエ・シアター『レイクス・プログレス』、法村友井バレエ団『アンナ・カレーニナ』、貞松・浜田バレエ団『DANCE』、篠原聖一『ロミオとジュリエット』ほか。
【各新聞社等による制定】
舞踊芸術賞
東京新聞制定。現在は洋舞/邦舞からそれぞれ毎年一名過去の実績を加味して大御所クラスが選ばれる功労賞。
中川鋭之助賞
東京新聞制定。 将来を嘱望される洋舞界の若手ダンサーに贈られる。16回のうちモダン畑は川野眞子、平山素子という超一流の2名のみの受賞。
朝日舞台芸術賞
朝日新聞社制定。7回で休止してしまったが、2000年代のコンテンポラリー・ダンスや舞踏の社会的認知度を高めるためにとてつもない貢献を果たした。黒田育世近藤良平らのブレイクを後押し。舞踊でのグランプリ受賞は山海塾のみだが勅使川原三郎やKバレエカンパニーが複数回舞台芸術賞を受けた。他に、新国立劇場バレエ団、東京バレエ団、牧阿佐美、金森穣/Noism、大野一雄、水と油らも賞を受けた。
毎日芸術賞
毎日新聞社制定。舞踊では森下洋子東京バレエ団が受賞。【追記:2011/2/3】吉田都さんが新春に受賞
【民間の財団等の顕彰】
橘秋子賞
財団法人 橘秋子記念財団制定。日本バレエのパイオニアのひとり故・橘秋子の業績を称え後世にその名を残すため設けられた。バレエ業界において極めて権威が高い。現在は特別賞・優秀賞・功労賞・舞台クリエイティブ賞、それに時おり助演優秀賞が出る。優秀賞は一線で活躍し日本バレエ史に名を残すプリンシパルたちの名が連なる。
スワン新人賞
財団法人 橘秋子記念財団制定。橘賞と同時に発表&授賞式が行われる。日本のバレエを応援していた一篤志家の私財をもとに若手ホープのダンサーに贈られる。
服部智恵子賞
日本バレエ協会制定。今年で26回目を数える。橘賞よりも後発だが、日本バレエの至宝・森下洋子以下の世代の名だたるプリマやノーブル・ダンサーが受賞している。
舞踊文化功労賞
日本バレエ協会制定。全国各地で舞踊家として、指導者として、また振付家として長年にわたり我が国バレエの普及・振興に尽力した人への顕彰。5年ごとに発表。
松山バレエ団顕彰
財団法人松山バレエ団主催。今年で20回目を迎えた。芸術賞・奨励賞・教育賞を制定。あらゆる洋舞のジャンルを対象に、地域で活躍する舞踊人や舞踊教育者にも光を当てる。ユニークな選出に思われるが、ここの奨励賞受賞を皮切りに各賞を次々受賞していった人も少なくなく独自のセレクションを誇りながら影響力も少なくない。
江口隆哉賞
現代舞踊協会制定。現代舞踊の作家に贈られる。大御所・ベテラン中心に選ばれるが、かつては木佐貫邦子、高瀬多佳子らが、近年では内田香、平山素子が比較的若くして受賞している。今年から選考委員の批評家枠が大幅にチェンジし若返ったのでどのようになっていくのか注目される。
河上鈴子記念スペイン舞踊賞
現代舞踊協会制定。現在は2年に1度の選出。わが国のフラメンコ舞踊の一線を切り開くアーティストに贈られている。
ニムラ舞踊賞
長野県・諏訪市主催。アメリカで活躍したパイオニア新村英一の功績を称えてのもの。近年の受賞者をみると、バレエと現代舞踊が交互に選出されている。中村恩恵やケイ・タケイ、笠井叡らの選出がシブい。
【批評家等による選出】
舞踊批評家協会賞
批評家有志の選考。本賞と新人賞を数件選ぶ。日舞や舞踏の選出は見識深い。ただ、洋舞とくにバレエに強い会員は極めて少なく選出に疑問の声も。
日本ダンスフォーラム賞
コンテポラリー・ダンスを対象に評論家・研究者やプロデューサーが専門的な見地から選出するという賞。大賞はあまり出ていないようだ。
「週刊オン★ステージ新聞」ベスト新人
選考による顕彰ではないが音楽、舞踊、演劇、映像の情報、批評による総合専門紙「週刊オン★ステージ新聞」が批評家等の投票で選ぶ新人賞。舞踊家振付家部門がある。振付家賞は希少で、近年は東野祥子、キミホ・ハルバート、森優貴らフレッシュな新鋭が獲得している。