平山素子新作ソロ『Carp with wings, me』

「あいちトリエンナーレ2010」パフォーミング・アーツ「まちなかパフォーマンス」の一環として行われた平山素子の新作ソロ『Carp with wings, me』を観てきた(10月3日所見)。
これはハープ奏者で平山と同じく名古屋出身の神谷朝子とのコラボレーションであるが、長者町にある地元きっての老舗料亭・河文が舞台。観客はまず座敷内に導かれ料亭の女中さんたちから茶菓の接待に授かる。その後中庭のぐるりへと案内される。日頃、中庭は池と石舞台になっている。石舞台のうえでは時おり能等が上演されることもあるそうだ。しかし、今回は鮮やかな演出の妙があった。なんと池の水をすべて抜いたのだ。そこで平山が踊るうちに、じょじょに水を放水して池が水で満たされていくという一風変わった仕掛け。
平山の踊りは45分に及んだ。平山は、黒地に赤白をあしらった衣装、頭には金色のオブジェを着けたいでたちで現れ踊り始める。オブジェを取って踊るとさながら人魚姫。そして、池には水が満ちはじめ、神谷が石舞台のうえから奏でる天上的といえるハープの響きにのせて天女のごとく舞う。凄絶なまでに美しい!夢見心地にさせられた。雨模様で終盤にはポツポツと小雨になり、ハープが濡れないか気に病んだが、無事最後まで踊り・演じられた。カーテンコールのアンコールで、小さなハープの演奏にのせての平山の踊りも絶品だった。
平山のダンサーとしての天才性が横溢した一作。身体能力の高さはさることながら空間や音楽のなかに身を置き、場を踊り場に踊らされつつ詩情豊かな世界を肉体から紡ぐ稀有な踊り手であると再認識した。今後、平山は10月17日に神奈川県芸術舞踊協会主催公演にて能美健志振付の大作『AQUA』に主演するほか、12月には新国立劇場他にて「ストラヴィンスキー・イブニング」と題して『春の祭典』と新作『兵士の物語』を演出・振付する。日本のダンスシーンを牽引する存在であるが、いよいよ円熟味と尖鋭さを増してきた。その動向を楽しみにしたい。
※写真一番上は会場前の看板。真中は「河文」の石舞台&中庭池。一番下は茶菓をいただいた座敷内にあったものだが平山をモデルにした掛け軸らしい(未確認)。
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