2010モダンダンスのコンクール回顧 シニア/創作

先日、「あきた全国舞踊祭」が行われ、結果発表が行われた。これで本年度のモダンダンス系の主要コンクールがすべて終了したことになる。シニア・成人部門および希少な創作部門について結果を振り返っておこう。

第67回全国舞踊コンクール現代舞踊第一部
第1位
木原浩太「誰もいなくなった部屋」(指導:加藤みや子)
第2位
幅田彩加「闇に歌声」(指導:下田栄子)
第3位
玉田光子「戻れない場所」(坂本秀子)

第67回全国舞踊コンクール創作部門部
第1位
宮本舞「verge」
第2位
中西優子「反響」
第3位
菊地尚子「境界線上のヘヴン」

第23回こうべ全国洋舞コンクールモダンダンス部門シニア部門
第1位
佐藤宏美「月夜にサク」(Roussewaltz)
第2位
伊東由里「Rose〜血跡に咲く〜」(Roussewaltz)
第3位
木原浩太「誰もいなくなった部屋」(加藤みや子ダンススペース)

第23回こうべ全国洋舞コンクール創作部門
優秀賞
木原浩太「三体」(加藤みや子ダンススペース)
奨励賞
那覇雄介「はっぴぃえんど」(貞松・浜田バレエ団・学園)

第43回埼玉全国舞踊コンクール2010モダン1部
第1位
林芳美「beyond〜その向こうに〜」(指導:金井桃枝)
第2位の1
海保文江「丑女」(指導:藤井利子)
第2位の2
幅田彩加「闇に歌声」(指導:下田栄子)
第3位の1
斉藤友美恵「草上、月とめまい」(指導:本間祥公)
第3位の2
北野友華「憐れみの賛歌」(指導:原島マヤ)
第3位の3
木原浩太「天空の庭-阿修羅の刻-」(指導:加藤みや子)

第12回なかの国際ダンスコンペティション シニア部門
第1位
新保恵「ココロ吐キカクル蝣」(金井桃枝舞踊研究所)
第2位
森本なか「響け叫びの果てまで」(小林容子ダンスカンパニー'y')
第3位
花輪洋治「花輪洋治」

第12回なかの国際ダンスコンペティション 創作部門
第1位
池田素子「東京Collage(+n)」( M.Dance Scene)
第2位
上原かつひろ 「紅」
第3位
Ahn Kyung Mi 「そっぽを向くことができない…」

あきた全国舞踊祭モダンダンスコンクール第29回シニア部
第1位・グランプリ
斉藤友美恵「草上、月とめまい」(指導:本間祥公)
第2位
水野多麻紀「orijin」(指導:水野聖子)
第3位
新保恵「ココロ吐キカクル蝣」(指導:金井桃枝)

(以上、開催順掲載)
隔年開催の北九州&アジア全国舞踊コンクールは本年度は開催なし。
上位入賞者をみると、若く才能ある踊り手がどんどん出てきた感がある。現代舞踊界の、教育システムとしての優秀さは否が応にも実感できよう。
全国舞踊コンクールシニア第1位はじめ埼玉、こうべの各コンクール成人部門で上位に入った木原浩太は、こうべでは創作部門で優秀賞を獲得した。彼と寺杣彩(2011年からは、てらそま彩)、塩川友佳子によるユニット・三体は来年2月に行われる「横浜ダンスコレクションEX」のコンペティションにもノミネートされている。
さいたまで2位に入った海保文江は自作出品であったが、コンクールピース以外に「白い人」「泥」という群舞作品を発表している。濃密な世界観の醸成に手ごたえがあり、より長い長編の作品へと発展してほしい佳作であった。創れる人である。
こうべで1・2位を占めたRoussewaltz勢であるが稀代の名ダンサーたる御大・内田香の下、のびのびと各自の個性を発揮していて目が離せない。このグループからは先日の「ソウル国際振付フェスティバル」にて第2位&ベストダンサー賞を獲得し、ランコントル(旧バニョレ)に招聘されるという快挙を果たした田中恵美理(Emily)やこの1年、文化庁の在外研修員制度を利用してフランスへ留学していた所夏海らも輩出している。
あきたで第1位を獲った斉藤友美恵作品の振付は指導者の本間祥公の息女の山口華子。彼女は今秋の新国立劇場主催公演「DANCE PLATFORM」に招聘されるなど注目を集める振付者である。モダン/コンテンポラリーの技法に通暁するが、それ以上に伝えたいもの・パッションの感じられる創作に手ごたえがある。伸びてほしい存在だ。
振付・創作といえば、こうべの創作部門。先述の木原のほか奨励賞の玉那覇雄介に注目したい。神戸の名門・貞松・浜田バレエ団の団員。三人の若手女性ダンサーを用いて、その出し入れの上手さや振付の変化の巧みさが際立っており、今後さらに作品を観てみたい存在だ。このバレエ団では、イリ・キリアンやオハッド・ナハリン、スタントン・ウェルチら世界的巨匠やOBでドイツ拠点に欧州で活躍する逸材・森優貴らの先鋭的なコンテンポラリー作品や石井潤、後藤早知子らの日本バレエ史に残る名作を上演しているが、毎秋に行われる「創作リサイタル」は元来、団員の創作を発表するものだった。玉那覇作品は今秋、森の入魂の大作『冬の旅』とともに「創作リサイタル」でも上演された。短編だがセンス豊かなものだったので、さらなる展開を期待したい。