東北地方太平洋沖地震・東日本大震災へのお見舞いと舞台芸術にできること

3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震東日本大震災において被害にあわれた方々にお見舞い申し上げるとともに、お亡くなりになられた方々のご遺族の皆様に、心からお悔やみ申し上げる。行方不明の方々の一刻も早い救出、避難所で暮らす方々に水・食料等が行き渡って一時であっても事態が落ち着くことを願う。
首都圏でも、東京・千葉・神奈川で震災によってお亡くなりになったり怪我を負われた方もいらっしゃることは忘れてはならないが、交通機関の乱れ等の被害で済んだのは幸いであった(筆者も世に言う「帰宅難民」になった…)。ただ、その後も余震や原子力発電所の被害による影響あって、予断を許さない状況にある。
そんななか舞台芸術公演が相次いで休止や延期になっている。地震発生当日はほとんどの劇場・ホールで行われる舞台が休演となったが、翌日以降は劇場や主催者によって判断は分かれた。また、地震発生数日してからは、公演期間中のみならず3月下旬開始予定だった公演の中止も相次いだ。新国立劇場では15日からのオペラ『マノン・レスコー』、19日からのバレエ「ダイナミック ダンス!」が中止に。国立劇場等含めた日本芸術文化振興会管轄の劇場すべてで3月中の公演は見合わせられた。
余震や電力不足による輪番停電等の問題もあって安全面に不安が残るのは否めない。観客はもちろん制作・実演側含めて安全が大切だ。また、「災害の悲惨さに日本中が胸を痛めているのに公演をするなんて許せない」という声もあろう。震災被害で亡くなられた方のご遺族やいまも暖を取るのもままならないと報じられる被災者の方の心情を思うと、公演自粛という判断が下されても致し方ないだろう。が、厳しい状況のなかにおいて、いや、こういった厳しいときだからこそ、芸術やエンターテインメントが人々を励まし、勇気づけるものだと信じて疑わない人たちも少なからずいる。人間が生きていくうえで空気や水と同じように大切なものであると(無論、被災地では、最低限の安全と精神的余裕を取り戻すことが何よりも先決なのは論を待たないが)。そして、役者やダンサー、スタッフたちにすれば生業であるし人生をかけたものであろう。生計や表現の手段が失われるとすれば、彼らの気持ちはいかばかりだろう、とも思う。
仕事ができなくなれば舞台関係者の経済が立ち行かなくなる。それどころか、率直にいって舞台をキャンセルすればとんでもない多大な損失が出る。公演自体休止すれば助成金も出なくなる。規模の大小あるが数百万〜数千万というものはザラであろうし、なかには予算が億単位で計上されていた公演もあるだろう。多くは民間の団体が主催するものであるし、金銭面の実質的な責任を取るのは主宰者やプロデューサー個人というケースも少なくないはずだ。今後の公演活動はおろか生計まで立ち行かなくなる人もでるかもしれない。公演を実行する/休止する、どちらにせよ、苦渋の判断であろうというのは、第三者的な立場から補足・強調しておきたいと思う。
繰り返すが安全面は大切だ。震災で亡くなられた方や被害を受けられた方へのお悔みの気持ちも皆が持っている(公演を行う場合に義援金を募るところも少なくないようだ)。当然だ。公演休止したところ、公演を続けたり初日を開けた/開けるところ、いろいろあるが、いずれにせよ皆、悩みに悩んだうえでの結論なのは間違いない。よくいわれるように「正解はない」というのが正しいだろう。どういう対応を行おうと確固たる信念に基づいたものならば安易に責めたりしたくない。芸術というものは、あらゆる位相で自らの理念や信念と切り離せない。いっぽうで、社会とどうリンクしていくかというのも探っていかなければならない。いま、日本で舞台芸術に携わる者は、芸術に何ができるか?社会における芸術の役割とは?という抜き差しならぬ命題に直面している。

【記事を書くに当たり参考にさせていただいたブログ・サイト】
la dolce vita 新国立劇場の3月公演はすべて中止
http://dorianjesus.cocolog-nifty.com/pyon/2011/03/3-3451.html
大和雅美さんを応援しよう!masamiFCブログ 【速報】新国立劇場、3月公演中止
http://blog.livedoor.jp/masamifc/archives/1548722.html
News-Headline 【自粛か決行か】上演可否の判断に揺れる東京演劇界
http://www.next-nevula.co.jp/news-headline/?p=1274