東日本大震災から1年、社会性ある活動が求められる舞踊界

今年もすでに3月に入った。あと10日で東日本大震災発生から1年を迎える。
震災直後は首都圏でも公演中止や延期が相次いだ。少し落ち着くとチャリティ公演や被災地への慰問公演を行うアーティストも現れた。「なぜ踊るのか」「ダンスに何ができるのか」と自問する人も少なくなかった。復興への道のりはまだ遠い。原発問題も収拾していない。舞踊界としても折からの不況や助成金の削減等厳しい情勢である。でも、そんな時代だからこそ芸術の力・存在意義が問われているのかもしれない。
大震災への復興を支援する募金活動や支援公演は数あれど、アーティスト主体となって立ちあげたイベントとして強く印象に残ったのが「オールニッポンバレエガラコンサート2011」だった。昨年8月、わが国を代表するバレエ・ダンサーたちが所属を超えて一堂に会しチャリティ公演を催した。収益や義援金をもとに年末には被災地の福島県いわき市で公演を行い、地元の人たちに無料で公演を観てもらう機会を設けた。
「オールニッポンバレエガラコンサート2011」の実行委員会は単に復興支援公演だけにとどまらず被災地を継続的に支援していく方針を打ち出している。3月26日、いわきアリオスにて西島千博と酒井はなが講師となってバレエワークショップを開催する。
オールニッポンバレエガラコンサート2011バレエワークショップ
http://iwaki-alios.jp/cd/app/index.cgi?CID=event&TID=PAGE&dataID=00891
一過性ではない継続的な支援活動に頭が下がる。が、これは何も被災地のためというだけでなく舞踊界が社会に対し責任を持って存在をアピールしていくために欠かせないことである。お金のかかる舞台芸術創造を行うには、公民問わず支援を受けなければ続かない。広く社会の理解・共感を得られなけば厳しいものがある。助成金に関しても「芸術団体に助成が下りるのではなく、その活動を通し観客や地域に還元されることがあるべき姿」ということをよく目にし耳にするようになった。その通りであろう。社会との接点抜きの芸術創造活動、芸術団体運営は、もはやありえなくなりつつある。
芸術性や作品の良し悪しは大切である。だが、観客(納税者)や地域含めた社会に対していかに還元できるかという点を踏まえて活動する団体やアーティストが支援されていくのは当然の流れであろう。「事業仕分け」や「劇場法」といった問題へのリアクションにしても演劇界や音楽界の後塵を拝しているのは明らか。今少し社会への接点を持つという意識を高めたいところだ。バレエ界のトップ・ダンサーたちが、震災を機に、そのような意識に目覚めてくれているのなら未来は決して暗いものではないと信じたい。
オールニッポンバレエガラコンサート2011 グランドフィナーレ