「トヨタ コレオグラフィーアワード2012"ネクステージ"(最終審査会)」ファイナリスト決定!

今年で8回目を迎えたコンテンポラリー・ダンス振付家に焦点を当てたコンペ「トヨタ コレオグラフィーアワード2012"ネクステージ"(最終審査会)」の概要が14日、リリースされた。開催日時、ファイナリスト6組は以下の通り。

日時:2012年7月22日(日) 14:30開場/15:00開演
会場:世田谷パブリックシアター
●ファナリスト
岡本優 北尾亘 篠田千明 鈴木優理子 関かおり 竹内梓
http://www.toyota.co.jp/tca/

岡本優は桜美林大学卒で木佐貫邦子に師事。昨年、舞踏/コンテンポラリー・ダンス界の大御所・笠井叡振付作品『Utrobne〜虚舟〜』に出演して注目された。“POPでいて強烈な、重量感のある身体表現を目指す”といダンス集団TABATHAの活動を行い、『わたしのメキシコ』で先日行われた「NEXTREAM21」優秀賞を獲得している。
北尾亘は子役時代から役者としてのキャリアを誇りつつバレエやストリートダンスを学ぶ。桜美林大学にて木佐貫邦子に師事し、近藤良平の作品にも出ている。2009年ダンスカンパニーBaobabを結成。各種公演・イベントを主催するかたわたらショーケースやコンペにも参加。多彩なスキルを持ち一方向にはとどまらないパフォーミングアーツのスタイルを模索している。コンドルズ振付コンペティション2010準グランプリ受賞。
http://dd-baobab-bb.boo.jp/
篠田千明は演出家/脚本家/イベンター。快快(faifai)にて演出と脚本を受け持つ。演劇やダンス、イベントといった枠を超えた活動を行う。2010年『My name is I LOVE YOU』にて「チューリヒ・シアター・スペクタクル」最優秀賞受賞。昨秋ジェローム・ベル『ザ・ショウ・マスト・ゴー・オン』日本版のオーディションに合格するも演出家との意見の相違から公演2日目には降板したことにより(一部で)話題に。
http://www.faifai.tv/
鈴木優理子は16歳より木佐貫邦子に師事。日本大学芸術学部演劇学科洋舞コース卒業。在学中より浜口彩子、村本すみれの作品に参加。オーストリアにて学び、欧州で創作を上演する実績を持つ。2011年「ACT Festival 2011 Best Choreographic Direction」(スペイン)、「横浜ダンスコレクションEX 2012審査員賞」を受賞。
http://yurikosuzuki.com/Site/Welcome.html
関かおりは幼少よりクラシック・バレエを学び、のちに山田うん、大橋可也ら作品に参加。2003年より自作を発表し2007年には1980年生まれ前後のアーティストと群々(むれ)を結成。2012年には、公私のパートナー岩渕貞太との共作『Hetero』で「横浜ダンスコレクションEX 2012若手振付家のための在日フランス大使館賞」を受賞。
http://kaoriseki.info/
竹内梓は7歳よりバレエを始め、のちに妻木律子、平山素子に師事。日本大学芸術学部演劇学科洋舞コース卒。ここでは加藤みや子にもついている。文化庁新進芸術家海外留学制度によりフランスにわたり以降、フランスを拠点とする。ソロ『Le blanc』にて「横浜ダンスコレクションEX 2011MASDANZA賞」受賞。今年2月には前回のトヨタアワードのファイナリスト、石川勇太とのデュオ作品を吉祥寺シアターで披露した。
http://azzusatakeuchi.blogspot.jp/
以前はファイナリスト選出に評論家等も関わっており、最終審査に関しても海外のプロデューサーや舞踊家、評論家が務めていた。が、前回からファイナリスト選出は最終審査の審査委員を兼ねる各地の劇場等のプロデューサーが務める。良くも悪くも彼ら彼女たちなりのコンテンポラリー・ダンスの見取り図、ビジョンなのだろう。アワード開始当初は新人発掘という主眼に加えコンテンポラリー・ダンスブランディングという側面もあったと思う。かなりの大物(業界的には)や新人とはいえないようなアーティストも選ばれていた。コンテンポラリー・ダンス界の祭典のような趣も。前回は、コンセプチャルなダンスや演劇的なダンスなども含めダンス表現の多様性を示そうという戦略を感じた。
毎回、選出に対して議論が起こるけれども、今回、最大のサプライズとなったのが篠田の選出であろう。以前、演劇畑と目されるチェルフィッチュ岡田利規が選出され、最終審査会での上演も大きな反響を得たことは記憶に新しい。前回でいえば神村恵の選出に顕著であったが、ダンス/振付の概念を問いかけるようなアーティストを選ぶことによって多様性を示し、広い分野からの注目を集める狙いがあるのかもしれない。
岡本はまだ創作歴が短いので文字通りの新人であろう。他の4者に関しては振付の質の高さと若手ながら実績があることからして順当なところだろう。篠田を除き幼少時からバレエをはじめとした身体訓練を受けており、大学でもダンスを学んでいる人が多い。今年、昨年の「横浜ダンスコレクションEX」の受賞者が入っているが、少し前のコンペ飽和期と違い無理に賞の性格や審査結果に差異を出す必然性はないのだろう。
プロデューサーの人たちがファイナリストを選び、異分野の文化人によるゲスト審査員が加わって最終審査を行うという方式になって2回目。前回の受賞者、プロジェクト大山を主宰する古家優里は、受賞者公演を東京だけでなく金沢で行い、さらには高知でも上演した。各種企画にも招聘され、古家はシス・カンパニー製作、長塚圭史演出「ガラスの動物園」の振付を手掛け大山メンバーが出演した。6月に予定される単独公演は狭き門を突破し芸術文化振興基金助成事業に採択される。まだ本格的にブレイクしたとはいえないが創作の場が広がり、社会的評価を受けた。トヨタ効果は絶大である。
前回、受賞は逸しても、審査委員を務めるプロデューサーが自劇場の企画に起用したり、他の制作関係者がトヨタの舞台を観て声をかけ実現した企画を知っている。活動の場が広がるチャンスなのは疑いない。このコンペを目指す価値はあるだろう。が、いうまでもなくトヨタに限らずコンペに入ったものだけが全てではない。応募してファイナリストに選ばれなかったからといって落胆することはない。向き不向きもある。観客(評論家やジャーナリスト含む)も面白いダンスを観たければ足を使って自分の目で探すのが王道。地道ながらマイペース、ぶれない創作姿勢で歩むアーティストを応援・支援することが大切。そのことを常に再認識させてくれることも含めての“トヨタ効果”である。