平成23年度財団法人松山バレエ団顕彰 発表

世界的プリマ・森下洋子の第24回高松宮殿下記念世界文化賞受賞という吉報に沸いているであろう松山バレエ団であるが、平成23年度財団法人松山バレエ団顕彰の受賞者が21日、明らかになった。

芸術賞木村公香(木村公香アトリエ・ドゥ・バレエ 主宰)
教育賞福田一(元日本民俗芸能協会 会長)
平成二十三年度特別賞平多浩子(平多浩子舞踊研究所 主宰)
平成二十三年度特別賞今村博明川口ゆり子(バレエシャンブルウエスト 主宰)

今年で22回目。洋舞のジャンルを問わず教育者を含め全国各地の舞踊関係者のなかから目配りよく顕彰するユニークな賞である。
芸術賞の木村は日本の洋舞における本流を歩んで来た指導者である。現代舞踊のパイオニア石井漠に学んだのち戦後バレエの礎を作った小牧正英率いる小牧バレエ団の絶頂期の活動に参加した。そして、チャイコフスキー記念東京バレエ学校開校とともに同校でワルラ−モフ、メッセレル、スミルノフらに学ぶ。正しいロシア・バレエのメソッドを習得し同校では指導にもあたった。レニングラード・バレエ学校(現ワガノワ・バレエ・アカデミー)に日本人として初めて学び、わが国を代表するノーブル・ダンサーとして活躍し現在ロシア・バレエ上演の第一人者である法村牧緒も留学直前の学生時代に木村の指導を受けている。子女の斎藤友佳理はご存じ東京バレエ団のプリマバレリーナとして内外で大活躍。主宰するアトリエ・ドゥ・バレエは斎藤の師であるエカテリーナ・マクシーモア記念の名を冠し、斎藤やその夫君でボリショイ・バレエプリンシパルであったニコライ・フョードロフも指導にあたっている。昨年は公益社団法人日本バレエ協会関東支部神奈川ブロック公演において『ジゼル』全幕を振付けた。主演したのは斎藤と法村牧緒の子息にあたる法村圭緒だった。長きにわたり確かなロシア・メソッドに基づく指導を継続してきた木村の功績が評価されたのは喜ばしい。
教育賞の福田は昨年9月に逝去した。早大時代からモダンダンスを踊り創作する。のちに評論に転じ洋舞・邦舞問わず健筆をふるい「朝日新聞」「東京新聞」などに寄稿。文化庁や民間の顕彰・助成、舞踊コンクールの審査委員を歴任した。舞踊評論の頂点を極め一時代を築いた存在だったといえる。晩年まで演出家として活躍し、歌舞伎座の「俳優祭」の演出等も行った。日本女子体育大学で教鞭も取った。多くの仕事のなかでも終生情熱を注いだのが民族舞踊の研究・紹介である。日本民俗芸能協会の会長を務め国際交流基金などと提携し海外公演も実現させた。教育者というか指導者、普及者としての多大な功績があらためて顕彰されたということになる。ちなみ福田は昨年まで、この松山バレエ団顕彰の選考委員を務めていた。本年度の任期中に逝去したため今回は藤井修治、うらわまこと、清水哲太郎の三氏が選考したようだ。
本年度は選考委員の推挙により特別賞として東日本大震災復興に尽力した舞踊関係者に贈られることになった。
平多浩子は仙台で舞踊研究所を主宰。日舞から現代舞踊に転じ江口隆哉に師事した。仙台発のモダンダンスの祭典「ダンスと杜の仲間たち」をプロデュースするなど内外に広く目を向けた活動を行っている。昨夏は東日本大震災の影響を受け仙台の多くのホールが使用できないなか当初予定していた会場とは場所を異にしながらも「One for all, all for one」のもとに発表会を行い大成功を収めたという。大震災に負けず奮闘する東北の舞踊家は多いが、その代表として平多に賞が贈られたのだろう。
今村・川口は牧阿佐美バレヱ団のプリンシパルとして活躍した経験を活かし八王子を拠点にバレエシャンブルウエストを展開している。古典バレエをきっちり上演するとともに『タチヤーナ』『天上の詩』など創作バレエに手腕を発揮し文化庁芸術祭大賞を2度獲得。昨年も『LUNA』の再演によって文化庁芸術祭優秀賞を得た。また、山梨県清里高原で「清里フィールドバレエ」を開催し今年で23年目となる。創造と普及両面で日本のバレエの向上に貢献してきた。昨年は「清里フィールドバレエ心の震災復興プロジェクト実行委員会」(代表:舩木上次、今村博明)が大震災の被災地を回りバレエ・コンサートを開催。自動演奏オルガン「ポール・ラッシュ」と「清里フィールドバレエ」に出演しているバレエシャンブルウエストのダンサーたちが東北3県11か所で公演。本年も継続して公演を行なっており一過性ではない支援活動が評価される。


バレエを習うということ

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