セッションハウスの選ぶ第1回セッションベスト賞は中村蓉『別れの詩』に決定!

東京・神楽坂にあるセッションハウスでは地下スタジオを使用し数々の自主公演・イベントを企画制作している。なかでも若手ダンサー/振付者の公募参加による「初めの第一歩」をサポートする企画「シアター21フェス」は名物企画である。ここから出発し飛躍を遂げ、現在第一線で活躍するアーティストは少なくない。
そんな同シリーズであるが、2012年に上演された80作品中10作品を選出し6月と12月に「ダンス花」という企画を設け再演した。そのなかから年鑑の最優秀賞を選ぶという新企画を始めた。「ダンサー達の励みになれば」という願いが込められていると伊藤直子さん(セッションハウス)からお聞きした。観客票及びスタッフ票の集計を参考に審査員5名が最終審査を行って決定したようだ。セッションハウス・アワード「ダンス花」への参加作品=ノミネートは以下の10組。

6月公演 愛知伸江×永井由利子 柿崎麻莉子 清藤美智子 中村蓉 森政博
12月公演 奥野美和 咲〜saku〜 竹之下たまみ hug×boku 中村理

審査員は池野惠(評論家)、近藤良平振付家・ダンサー)、松本大樹(振付家・ダンサー)、 伊藤孝(セッションハウス代表)、伊藤直子(振付家・セッションハウス企画監修)の5氏。
審査の結果、第1回セッションベスト賞は中村蓉『別れの詩』に決定した。
http://www.session-house.net/bestsho.html
中村は早稲田大学モダンダンスクラブにてコンテンポラリーダンスを始め2009年より小野寺修二・近藤良平の振付作品に参加、アシスタントを務める。郷ひろみMVdocomoTVCM等にも出演。2011年より創作活動を始める。身近で親しみやすい題材を巧みな構成・ダンスによって観客に示すのが特徴。親密感のあるパフォーマンスを明確なコンセプトと豊かな語り口で展開する舞台運びの上手さはなかなかのもの。
昨年、当方が審査委員を務めた「ダンスがみたい!新人シリーズ10」では新人賞には届かなかったが大好評を博し最終審査で私と志賀信夫氏がベスト3に入れ貫成人氏や上村なおか氏も彼女の才能を高く評価していた。続く5月の「ネクストリーム21ダンスコンペティション」では「審査員特別賞」を得た。そして2013年に入り、 第1回セッションベスト賞受賞。さらには先日「横浜ダンスコレクションEX2013」の「コンペティションI 作品部門」において「審査員賞」「シビウ国際演劇祭賞」という2冠に輝いた。いま、もっとも注目される立場の気鋭であるが、知性豊かで自身の足場をしっかり見据える逸材であるだけに末頼もしい。近藤良平が「ダンストリエンナーレトーキョー2012」で発表した『恋のバカンス』で近藤とともに踊るなど華と才気ある躍り手としても注目される。
ノミネートされた人を見ても期待の人たちが揃う。愛知伸江×永井由利子は先日の「ダンスがみたい!新人シリーズ11」にて新作デュオ『WHITE LETTER』を発表、近来稀に見るコンテンポラリー・バレエの清新な佳作に育ち得る可能性を示した。柿崎麻莉子はオハッド・ナハリン率いるバットシェバ舞踊団の下部組織バットシェバ・アンサンブルに入団したばかりの注目の新星。奥野美和は今年の横浜ダンコレで「若手振付家のための在日フランス大使館賞」「MASDANZA賞」を獲得、中村と賞を分けあった。中村と奥野の受賞作がともにセッションハウスを経由していることは注目すべき。1990年代半ば以降現在に至るまでセッションハウスが日本のコンテンポラリー・ダンスのメッカとしての役柄を果たし続けている証左に他ならないだろう。
なお中村の受賞作は3月30日に行われる「ダンス専科2013」にて上演され併せて授賞式も行われるようだ。
中村蓉 half 2011ver.

Miwa Okuno PV "Put the image on my body"