ルジマトフ&インペリアル・ロシア・バレエ



Farukh Ruzimatov and Imperal Russia Ballet

ルジマトフ&インペリアル・ロシア・バレエ公演を観た。

今回、『シェへラザード』は、ザハーロワと踊る回を観たかったのだが都合により断念。しかし、ルジマートフ&マハリナの『シェへラザード』は何度も観ているが、歴史に残る名演だと思う。ルジマートフは、ポーズの一つ一つが絵になっている。古典作品では正直、もうすぐれたパフォーマンスをみせることは難しいかもしれない。でも、この作品でのルジマートフは、みる度に「いまが最高」と思わせられる。マハリナは二年前、ロシア国立バレエ団公演でルジマートフと共演した際、体が絞れていなくて目を疑った。某誌のレビューでも厳しく書かれていたが、それも致し方なしと思ったくらいだ。今回はコンディションもいいようで、なんともいえぬ色艶を発散した。ふたりは濃い過ぎるくらい濃いペアだ。でも、そうでなければ『シェへラザード』はつまらない。うれしい驚きだったのが、シャリアール王に、80〜90年代、ボリショイの名ソリストとして鳴らしたタランダ(インペリアル・ロシア・バレエの芸術監督)が登場したこと。貫禄十分で、現在望みうる最良のキャストが揃ったのではないだろうか。

久々の上演となった『アダージェット〜ソネット』は、ルジマートフファンにとっては思いいれの深い作品のはず。しかし、どうしてもベジャールの名作を思い浮かべてしまう。振付がよくない。前半など、手や腕を使った動き多いが、並みの踊り手が踊れば手踊りにしかならないだろう。ルジマートフだからこそ、しなをつくったりいろいろみせ方に工夫をして、観るに耐えるものにはなってはいたが・・・。エイフマンの『アルビノーニのアダージオ』もそう。ルジマートフの踊る舞台は何度か観てすごく好きだけれども、振付はそれほどいいものではない。振付の善し悪しと、ダンサーの善し悪しは違う。そこのところを混同してはいけない。

それにしても、ルジマートフは振付家に恵まれなかった踊り手だな、と思う。ABTやベジャールのもとで踊っていたら、果たしていまごろどんな踊り手になっていたのだろうか。過ぎたことを掘り返してもしかたないが、舞台を観ているうちにそんな思いで胸がいっぱいになった。でも、本人が踊りたくて踊っているものなのだから他人が、しかも観客がアレコレいうのは、野暮というもの。近年は、笠井叡の『レクイエム』という、いまのルジマートフにしか出せない境地をよく引き出した秀作もある。大ベテランながら、まだ先があると感じさせる数少ない踊り手であるのは確かだ。

(2006年10月8日 新宿文化センター大ホール)