バレエTAMA「プティパの夕べ」

dance3002007-02-20

バレエTAMA公演「プティパの夕べ」が行われた。クラシック・バレエの父・マリウス・プティパの、日本でもなじみの薄い作品を含む傑作を連ねた公演。構成・演出はロシア国立バレエ団のプリンシパル・千野真沙美が手がけた。

三部構成、八作品を上演。第一部は『ヴェニスの謝肉祭』よりグラン・パ、『騎兵隊の休息』よりグラン・パ・ド・ドゥ、オンディーヌ「水の精 ナヤーダと漁夫」と古きよきロシア・バレエの魅力を伝える作品が並ぶ。

第二部の最初に踊られた『せむしの仔馬』よりフレスキー(生きかえる銅像)は、個々の踊り手のポーズや動きも面白く洒落た味わいのある逸品。続いての『眠れる森の美女』グラン・パ・ド・ドゥは、いわずと知れたプティパ・バレエの金字塔だ。『ラ・フィユ・マル・ガルデ』からは、1幕のリーズとコーラスによるパ・デ・リュバンが上演された。この部最後は『バヤデルカ』よりパ・ダクシオン。全幕自体は1877年初演だが、第二幕婚約式で踊られるパ・ダクシオンは1900年につくられたもの。マリインスキー・バレエの上演した、セルゲイ・ヴィハレフによる復刻版も知られるが、ここでは1940年チブキアーニが演出したものが上演された。

第三部は『海賊』より花園のパ・ダクシオン。コール・ド・バレエの壮麗な踊りに始まり、グラン・パ・ド・ドゥに至るまで多彩な踊りの洪水。ディヴェルティスマンとして独立上演されることも多く、華やいだ雰囲気が魅力的だ。最後は、千野の演出・振付によるフィナーレである。舞台上に吊るされた、プティパの肖像に一同、礼。

休憩入れて3時間に及ぶ公演だったが少しも飽きることはない。古典作品は時代とともに意匠を変えていくことは当然。踊り手の身体も変わってくるし、踊り方・体の使い方も違ってくる。全幕作品として上演される場合には、さまざまの改訂・新演出がくわえられるのも自然な流れだ。だが、プティパ・バレエ独自の詩情と様式美は不滅。バレエの源流をたどり、その歴史を確認する作業も大切である。その意味において大変意義のある、貴重な公演であった。

バレエTAMAは西東京多摩地域のバレエスタジオが加盟する団体。今回の公演は二日間の開催ということもあり相当力の入っていたようだ。踊り手のレベルもなかなかのもの。とはいえ、中心となるのはゲスト陣である。なかでも『眠れる森の美女』『海賊』に登場した島田衣子(井上バレエ団)の充実振りに目を見張らされた。佐多達枝、山崎広太ら創作・コンテンポラリー作品での活躍目覚しいが、古典も完璧に踊りこなせる。無駄なく筋力を用いた、安定感のある踊りは掛け値なしに素晴しい。ベテラン・田中祐子(牧阿佐美バレヱ団)も『オンディーヌ』『バヤデルカ』で手堅い踊りをみせた。ここ一番での集中力はさすが。男性陣もロシア国立バレエ団のアントン・グェイケルのほか、古川和則(東京バレエ団)、平野玲(東京バレエ団)、桑原智昭(谷桃子バレエ団)、持田剛史ら実力派が揃い好演していた。

(2006年2月18日 町田市民ホール)