バレエシャンブルウエスト『ブランカ』『フェアリーテイルズ』

初夏から春まで怒涛の公演ラッシュが続き、4月に入るとグッと公演数が減るのは例年通り。新年度、新学期の忙しい時期でもある。とはいえ、この時期に意欲的に公演を打つカンパニーもないわけではない。

バレエシャンブルウエストは第53回定期公演として『ブランカ』『フェアリーテイルズ』を日替わり上演。昨秋初演されたばかりの『ブランカ』は手直しもいれているようだ。“絶対零度の至上の愛”がテーマである。全編白を基調にした、清潔感のある舞台。台本が錬られており、ストーリーバレエとしてよくまとまっている。川口ゆり子と今村博明は若々しさと年輪が同居するすぐれたパフォーマンスをみせた。他に特筆すべきは“白い亡霊”を演じた佐藤崇有貴。その圧倒的な存在感により舞台を引き締め、作品の品格を高めてる。日本のバレエダンサーでは数少ない芝居巧者のひとり。『フェアリーテイルズ』は老画家(今村博明)が自身の青春を回顧するという筋書きはあるものの踊りをみせる要素が強い。迷える青年画家は、森のなかで妖精に出会う。沢の精(川口ゆり子)はじめ妖精たちのメルヘンチックな踊りが見ものである。

両作品とも振付・舞台作法ともクラシックの規範を守っている。踊りの一つひとつはもちろん選曲・編曲から照明、装置ふくめ丁寧な仕事ぶりが光る。多くの若手ダンサーに適材適所で踊る機会をあたえていたことも好印象だった。

(2007年4月6、7日 新国立劇場中劇場)