海外で踊ること、国内で踊ること〜「ローザンヌ・ガラ2007」など

毎年夏になると、海外のカンパニーで活躍するダンサーが帰国、各地の公演・発表会で活躍している。それらの公演をみるたび、日本という国は優れたダンサーを輩出しているという点では世界でもトップレベルだと痛感させられる。
先日行われた高円宮憲仁親王殿下メモリアル「ローザンヌ・ガラ2007」は、ローザンヌ国際バレエコンクールの日本人入賞者たちを集めてのものであり、なかなか豪華なメンバーが集まっていた(8月18日所見 青山劇場)。谷桃子バレエ団のトッププリマ・高部尚子、北米で息の長い活躍を続ける中村かおりといったベテランから英国ロイヤル・バレエのファースト・ソリスト・佐々木陽平、マラーホフ率いるベルリン国立バレエのプリンシパルに昇進した中村祥子ら人気者、今年受賞したばかりの河野舞衣、吉山シャール・ルイ・アンドレまで新旧世代が一堂に会する。里帰り組を中心に、この20年の間に日本が生んだ実力派ダンサーたちの妙技を味わえるまたとない機会だった。
このガラが興味深かったのは、海外組のプログラムに加え、貞松・浜田バレエ団による『DANCE』が上演されたこと。同団は神戸を拠点に長年、古典と創作に力を入れ躍進を遂げてきた。今回上演されたオハッド・ナハリン作品のほか、香港の鬼才ユー・リン作品(『眠れぬ森の美女』02年東京でも上演)、パリ・オペラ座バレエもレパートリーに採用するティエリー・マランダイン作品(『キエロ』)などを上演。クラシックに習熟したうえでコンテンポラリー作品をきっちり踊りこなせる、国内でも数少ない団体のひとつといえるだろう。神戸という地域で活動を続けながら世界レベルの作品を踊りこなせる技量を備えたカンパニーがあることに東京の観客は驚愕したのではないだろうか。
ローザンヌつながりで言えば、先日、同賞出身の上野水香パリ・オペラ座バレエの新星マチュー・ガニオと共演したルグリと輝ける仲間たち・全幕特別プロ『白鳥の湖』の会も催されている(8月17日 ゆうぽうと簡易保険ホール)。上野は日本人の中でも突出したプロポーションと技量を誇り、海外での活躍も十分できるはずだが、日本を拠点に活動。スター性も高く、多くのファンに幸福を与える存在として得難いものがある。昨年、電撃的な移籍が話題をさらったKバレエカンパニーの吉田都も日本に拠点を移し多くのファンを魅了。ベテランやスターたちが国内で活躍してくれるのは嬉しい限りだ。
コンテンポラリーでも、日本初のレジデンシャル・ダンス・カンパニーとして注目浴びる(もはやクリシェと化した形容だが)Noismの新メンバーに海外の一線でバリバリに活躍するメンツが加わったようだ。プロのカンパニーとしての陣容が整い、踊り手にとっても魅力的なカンパニーとなりつつあるのだろう。Noismも活動4年目を迎え、南米、ロシアツアーも敢行、国内のみならず海外を視野に入れた活動を展開しつつある。
海外で踊る邦人、そして国内を拠点に世界に目を向け着実に活動する団体・個人。ともにダンスシーンを活性化させる存在として一層活躍してもらいたいものである。