ベテランを侮るべからず〜堀内完など

師走に一通の案内状が舞い込んだ。「堀内完作品集の夕べ バレエモデルヌ」なる会のお知らせ。なんの接点もないはずだが時折そういうこともある。堀内は貝谷八百子に師事、ユニークバレエシアターを主宰し、堀内充、元、かおりを育てた人物。おそらく80歳にはなろうか。今回の会では彼が80年代から創作してきた作品群が並んだ。
『タンゴバレエ』『ジャズコンボとオーケストラの対話』など、ダンスクラシックをベースにジャズダンスなども織り交ぜた作品は趣深くはある。ローラン・プティが70年代にロックバンド、ピンク・フロイドの生演奏にあわせ「ピンク・フロイド・バレエ」を創作しているが(近年、牧阿佐美バレヱ団において新版が制作されている)、堀内も期を同じくしてピンク・フロイドの音楽を使ったり、ジャズの生演奏に合わせた創作を発表している。日本の創作バレエに新生面をもたらした人物として記憶されるであろう。貴重な作品をみることのできる、またとない機会だった(1月14日 セシオン杉並)。
このところバレエやモダンダンスで大ベテランの会が続いている。東京シティ・バレエ団では先日、石田種生の、創意に富んだ『白鳥の湖』を久々に大劇場で上演し、今後7月には石井清子の舞踊生活70周年記念公演も催す。「芸術祭男」の異名を取り、演劇的バレエを得意とした横井茂も2月に久々の、そして総決算ともいえるリサイタルを開催。例外的に息の長い活動を続ける佐多達枝は近年最大の傑作のひとつ『庭園』を初夏に再演する。老人力といえば失礼かもしれないが、いずれもベテランならではの老練な手腕と、余裕から生まれる瑞々しい感性の反映された会となりそうだ。