金森穣が芸術選奨文部科学大臣賞を受賞

快哉を叫びたいニュースが入ってきた。
Noismを率いる金森穣が「平成19年度文化庁芸術選奨文部科学大臣賞」の舞踊部門を授賞した。6年前に第2回朝日舞台芸術賞を受け、その後もいくつか賞を貰ってはいるが、久々の大きな授賞。個人的にも昨年、もっとも活躍したアーティストのひとりであると思っており、各紙誌のアンケート等でも授賞理由となった『PLAY 2 PLAY-干渉する次元』を挙げたが他に入れていた人は少なかった。今年に入って発表されたいくつかの賞でもスルーだったため意外に思っていたが、ここにきて大きな栄誉を得た。
この授賞が凄いのは、新人賞部門ではなく正賞で評価されたこと、そして33歳という受賞年齢である。普通、新進気鋭のアーティストならまず新人賞部門で評価されることが多い。バレエやコンテンポラリーのダンサーなどであれば、20代、30代の人は大抵新人賞に選ばれるだろう。今回の舞踊部門新人賞を受けた山本隆之は35歳での受賞。数年前の熊川哲也や齋藤友佳理、吉田都、下村由理恵などは30台前半、半ばで正賞を得たが別格であろう。振付家となるとさらにキャリアを積んだ人が多く、世界の勅使川原三郎天児牛大(山海塾)らですら正賞を受けたのは50歳すぎてから。したがって、金森が33歳で賞を得たことは、まさに異例中の異例といえる(ちなみに日本舞踊や古典芸能だと50歳でも洟垂れ小僧扱いが多く、各部門の受賞者の年齢をみても金森の正賞受賞は非常に若い部類に属することがわかる)。
金森とNoismに関しては、作品の水準はもとより、日本初のレジデンシャルダンスカンパニーとしての活動、度重なる海外公演の成果はいくら高く評価してもしすぎることはない。しかし、プロのダンスカンパニーを自治体の支援を受けて運営していくことには多大な苦労があることだろうし、多様なバックグラウンドを持つダンサーたちを受け入れ集団としてまとめていくことも簡単ではないだろう。3年間の延長を受けセカンドステージに入り、来年には新国立劇場主催公演への出演も決まったようだが、ジャーナリズムやファンも「順調」「意欲的」と能天気に褒めて喜んでいればいいわけではない。より安定して活動できるような基盤づくりができるよう後押しし、それに続く存在が生まれるよう支援していくことが必要だ。
ともあれ、今回の金森の授賞は、欧州に学び一線で活動した作家が帰国後、独自の創作を推し進めた成果を顕彰し、改めて世に知らしめた点、そして若いアーティストに希望をあたえるであろう点で意義が深い。成果からして当然のこととはいえ、慣例からすると英断といえる選出。推薦、選考にあたった方々に心から敬意を表したい。

以下、受賞理由。

ダンスの未来へのヴィジョンと、ジャンルを超える大胆なコンテンツは、近年、日本人ダンサーの中にあって群を抜く才能とスケールの大きさを示している。九十年代はヨーロッパでベジャール、キリアンらに付いて実地の修行を重ね、帰国するやその成果を生かして斬新な自作を発表、平成十六年からはこの国で初めての公立劇場専属集団「Noismノイズム」を新潟りゅーとぴあに結成、今年度の二本の創作「PLAY 2 PLAY」、「W-view」においても、振付・演技・演出・制作のすべての点で群を抜くオリジナリティを発揮した。