コンクールの季節

例年4月は他の月に比べダンス公演が少なくなります。文化庁はじめとした助成金の採択結果が発表されるのが3月になるためです。4月では公演予算の計上等に不安を残すため大きな公演はなかなか打てないでしょう。いっぽうで4月といえば、バレエの発表会・学校公演が多くなります。そして、もうひとつ忘れてはならないのがコンクールです。4月以降本格的な舞踊コンクールシーズンがはじまります。
日本の舞踊コンクールといえば老舗中の老舗、今年で66回目を迎えた東京新聞主催の「全国舞踊コンクール」をまず第一に挙げなければならないでしょう。バレエ、現代舞踊、児童舞踊、創作、邦舞とジャンルが多岐にわたり、シニアからジュニアまで部門も多彩です。今年も先日行われ、バレエ中心にいくつかの部門を観ることができましたが熱戦が繰り広げられていました。他にも4月には既に終わった「まちだ全国バレエコンクール」、月末には西日本最大規模の「こうべ全国洋舞コンクール」に加え、今年で3回目となる「うつくしま、ふくしま。全国洋舞コンクール」も行われます。コンクールというものは、主催者にとっては舞踊文化の発展に寄与しつつ運営益を舞踊・文化振興に用いることができ、出場者にとっては日々の研鑽の成果を発表する場であります。観客にとっては、若い注目株にいち早く出会える機会といえるでしょう。
ただ、いまさら述べるまでもなくコンクールとは、踊り手にとって武者修行であり、実際の舞台でのパフォーマンスとは異なるもの。コンクールだけがすべてではありません。現代舞踊界では、コンクールにおける4分間の作品によって新進ダンサーの格付けがなされる伝統があります。それに対して私は一定の理解は持つものの、若いダンサーが貴重な20代の青春を“コンクール命”で無駄にしてしまう恐れもなくはありません。実演家間の慣習はさておいて報じるメディア、書き手はコンクールの結果を尊重しつつそれのみに囚われない広い視野からの報道、評論活動が望まれるでしょう。バレエに関しては関西、中部を中心に全国各地からの気鋭が妍を競うため、首都圏ではなかなか観ることの叶わない踊り手に接することができます。ジュニアの活躍にも将来を楽しみにさせてくれるものがありますがまだまだ未知数な成長期。ダンサーに対する批評を行う場合、コンクールにおけるヴァリエーションやパ・ド・ドゥではなく作品・公演単位でじっくり観ていくことが大切、コンクールでの活躍のみを捉え押し出し報じるのは勇み足、青田買い、自己顕示に過ぎません。コンクールだけがすべてではない。その認識を出場者、観る方・報じる側ともども一層深めていくことが大切ではないでしょうか。