石井歓が死去

作曲家・元全日本合唱連盟理事長の石井歓さんが11月24日、肺炎で死去されたそうです。88歳。同じく作曲家である石井眞木と石井五郎はそれぞれ弟と叔父に当たります。父はいうまでもなく日本の洋舞のパイオニアである石井漠。
http://www.asahi.com/obituaries/update/1203/TKY200912030194.html
1952年西ドイツに留学し、ミュンヘン国立音楽大学作曲科・指揮科を修了。『カルミナ・ブラーナ』で知られる、かのカール・オルフにも師事しています。1954年に帰国後、桐朋学園大学を振り出しに各地の大学で教鞭をとり、全日本合唱連盟理事長等の要職を歴任しました。無論、作曲家・指揮者としても活躍。紫綬褒章等を受けています。
舞踊音楽の作曲も手がけ、ことに『神とバヤデーレ』(1950年)やバレエ組曲『まりも』(1962年)等で知られましょう。後者は、北海道の阿寒湖に群生する「まりも」についてのアイヌの伝説を取り上げた悲恋物語で、ワルラーモフ/メッセレルの振付・演出によって東京バレエ学校が初演しました。その際には小林恭らが踊っています。同バレエ学校を前身とする佐々木忠次主宰のチャイコフスキー記念東京バレエ団でも装置や衣装を変えるなどしつつ再演され、ソビエトでも上演されて評判をとったようです。
http://www.thetokyoballet.com/repertory/detail.php?id=60
2004年夏に大阪のワクイバレエ団が「まりも」を初演から42年ぶりに涌井三枝子の演出・振付によって上演しました。以下、菘(すずな)あつこ氏による舞台評。
http://www.chacott-jp.com/magazine/world-report/from-osaka/from-osaka-0409e.html
その際、所用と重なったこともあって幸運にも足を運べました。初演時の石井の曲を使用しつつ改編を加えた録音版での上演でしたが、会場には石井本人の姿も。カーテンコールでは舞台に上がって盛大な拍手を受けていたのを思い出します。
日本の洋舞音楽を牽引し、イリ・キリアンが振付けた『輝夜姫』等で知られる弟・石井眞木とともに日本洋舞史に多大な貢献をされた方。父について記した「舞踊詩人石井漠」という著作もあります。ご冥福を心からお祈り申し上げます。


石井歓;バレエ組曲「まりも」@森正/東京都so.

石井歓;バレエ組曲「まりも」@森正/東京都so.


舞踊詩人石井漠

舞踊詩人石井漠