ジゼル・イヤーも終盤に
昨年から内外の団体が相次いでロマンティック・バレエの名作『ジゼル』を上演しています。2幕構成とコンパクト、装置もシンプルなだけに、経費がかかり難く不況にも強いバレエという説もありますが(笑)シンプルなゆえカンパニーのダンサーの水準や細部の演出への意識の有無が明瞭に見て取れます。さまざまなダンサーによるジゼル、アルブレヒトの演技を見比べる楽しみに加え、各団体の演出の違いを見るのも一興。何度見ても飽きない――『ジゼル』というバレエは汲めども尽きぬ魅力に溢れています。
昨日(18日)からは名門パリ・オペラ座バレエ団の上演が始まりました。ジャン・コラーリ、ジュール・ペローによる1841年の初演版、ロシアでのマリウス・プティパの改訂振付を踏まえつつパトリス・バール、ユージン・ポリャコフが新たに振付けたバージョン。マイムも多用し演劇性の高さが際立ちます。初日はジゼル:アニエス・ルテステュ、アルブレヒト:ジョゼ・マルティネズ、ミルタ:マリ=アニエス・ジロというエトワールが登板し迫真の演技を繰り広げ、ソリスト・群舞の水準も言わずもがなですが高いものでした。
今年は年明けに、精緻な演劇的演出で名高いピーター・ライト版をスターダンサーズ・バレエ団が上演しましたし、今月はニーナ・アナニアシヴィリが芸術監督・主演を務めるグルジア国立バレエの公演も。月末には日本バレエ協会が都民芸術フェスティバル参加公演としてイングリッシュ・ナショナル・バレエのメアリー・スキーピング演出・構成・振付によるバージョンを上演します。1841年初演当時の楽曲による復元版ということでバレエ・フリークとしては気になるところ。酒井はな&ファビアン・ライマー(イングリッシュ・ナショナル・バレエ)、永橋あゆみ&法村圭緒の2組が共演します。
『ジゼル』の魅力は数あれども、台本がしっかりしていること、そして踊りと演技の合一が大切だという点は、今の時代に生み出される物語バレエにとっても示唆に富むのではないでしょうか。現存し頻繁に上演される最古のバレエといえますが、古くて新しい作品。物語バレエの原点があると相次ぐ上演に接して強く思わせられました。
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